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監視カメラの映像を解析

 「現状では事故の原因や崩壊過程について、最終的な結論は引き出せていない」。インフラ交通省の調査委員会は、事故から1カ月後の9月14日に取りまとめた報告書でこう断ったうえで、高架橋の構造やがれきの位置、崩落の様子を捉えたいくつかの映像などを基に、崩壊過程に関して3つの仮説を示した(図3)。

伊インフラ交通省の事故調が示した3つの仮説
図3 ■ 桁の損傷が引き金になった可能性が高い?
仮説1 崩壊の起点はP9主塔の東側の箱桁
仮説1 崩壊の起点はP9主塔の東側の箱桁
伊インフラ交通省の報告書を基に日経コンストラクションが作成
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仮説2 崩壊の起点はP9主塔の西側の箱桁
仮説2 崩壊の起点はP9主塔の西側の箱桁
伊インフラ交通省の報告書を基に日経コンストラクションが作成
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仮説3 南西の斜材が崩壊の起点に
仮説3 南西の斜材が崩壊の起点に
伊インフラ交通省の報告書を基に日経コンストラクションが作成
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伊インフラ交通省の報告書を基に日経コンストラクションが作成。報告書の表紙
伊インフラ交通省の報告書を基に日経コンストラクションが作成。報告書の表紙
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写真1■ 2012年に撮影された、落橋前のポルチェベーラ高架橋。右が外ケーブルで補強したP11主塔。隣のP10主塔頂部には鋼板による補強を施してある。その左が崩落したP9主塔。橋がある高速道路A10号は交通の大動脈だったうえ、直下に鉄道や住宅地があるので、維持管理が難しそうだ(写真:八馬 智)
写真1■ 2012年に撮影された、落橋前のポルチェベーラ高架橋。右が外ケーブルで補強したP11主塔。隣のP10主塔頂部には鋼板による補強を施してある。その左が崩落したP9主塔。橋がある高速道路A10号は交通の大動脈だったうえ、直下に鉄道や住宅地があるので、維持管理が難しそうだ(写真:八馬 智)
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 最も可能性が高いとしたのは、P9主塔の東側に張り出した箱桁の南側が崩壊の起点となったとする説だ(仮説1)。これによって、東側のゲルバー部は支持を失い落下。斜材やP9主塔の構造システムも影響を受けて崩壊する。最後に西側のゲルバー部が支持を失って落下する。

 2つ目の仮説では、P9主塔の西側に張り出した箱桁の中央南側が崩壊し、落橋のきっかけとなったとしている(仮説2)。上記の2つの仮説は、主に監視カメラの映像を分析して組み立てられたようだ。

 調査委員会が最も可能性が低いと位置づけた仮説は意外にも、南西の斜材がケーブルの腐食で損傷し、落橋のきっかけとなったとする「ケーブル破断説」だった(仮説3)。報告書の情報を整理すると、調査委員会は次のように判断したとみられる。

 主塔とH形橋脚、箱桁、斜材から成る斜張橋部の構造システムは、主塔の垂直軸に関して、東西方向と南北方向のいずれについても左右対称だ(「嵐の中で落橋、43人死亡の大惨事 」の図4を参照)。

 また、ケーブルは主塔頂部を東西方向に架け渡されており、東西でつながっている。もし南西の斜材が最初に損傷すれば、ほぼ同時に南東の斜材も主塔から外れて崩壊する。

 だから、ケーブルの破断をきっかけに落橋した場合、がれきの位置は主塔を中心に東西で対称となり、南北では逆対称になるだろう。しかし、実際は、東西と南北のいずれについても非対称だ。従って、ケーブルの破断が原因の可能性は低い。むしろ、箱桁のような別の部材を起点とみるほうが道理に合う──。

 ただし、こうしたシナリオを裏付けるだけの、箱桁の劣化状況や安全性に関する情報はない。ケーブルは主塔頂部を介して東西につながっているものの、コンクリートの付着もあるはず。片側が破断したからといって瞬時にすっぽ抜けるかは不明だ。

 調査委員会の仮説について日本の複数の橋梁技術者に意見を聞いたところ、「剛性の高い箱桁が最初に損傷したというのは常識的には考え難い。やはりケーブルの破断が原因ではないか」という見立てが多かった。

 「嵐の中で落橋、43人死亡の大惨事」の項で説明したように、過去にP11主塔で斜材を補強したことや、崩壊したP9主塔で近々、同様の補強を実施する予定だったことを踏まえると、ケーブルの破断を引き金とみるのが自然に思える(写真1)。