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 既設のコンクリート構造物を増し厚補強するために欠かせない「孔開け」。規模にもよるが、数百~数千カ所に及ぶ孔を手持ち式のドリルで開ける。コンクリートの削孔は単調であるだけでなく、騒音や振動、粉じんの発生を伴う。作業員に負担を強いる大変な作業だ。

 そんな苦渋作業をなくすために、奥村組は削孔を自動化するマシンを開発した(写真1、2)。

写真1■ 大径用の自動削孔マシン。空圧削岩機や集じん機、制御盤などを搭載。クレーンで吊り上げるなどして現場に搬入する(写真:奥村組)
写真1■ 大径用の自動削孔マシン。空圧削岩機や集じん機、制御盤などを搭載。クレーンで吊り上げるなどして現場に搬入する(写真:奥村組)
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写真2■ 小径用マシンは深さ30cmまで削孔できる。高さ2.3m、幅1m、奥行き2mで、重さは約500kgだ。上下と前後に可動し、左右にはほとんど動かない。大径用に比べて軽いので、現場内では人が押して運ぶ(写真:奥村組)
写真2■ 小径用マシンは深さ30cmまで削孔できる。高さ2.3m、幅1m、奥行き2mで、重さは約500kgだ。上下と前後に可動し、左右にはほとんど動かない。大径用に比べて軽いので、現場内では人が押して運ぶ(写真:奥村組)
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 鋼製のフレームに搭載した市販の手持ち式ドリルが上下左右と前後に稼働。CAD図面などで事前に指定した位置に、連続して孔を開けていく。直径40mm程度の空圧削岩機に対応する大径用と、直径25mmほどの電動ハンマードリルを搭載する小径用の2台を製作した。

 大径用のマシンは、高さ2.4m、幅1.6m、奥行き2.2mで、重さは980kg。最大で深さ1.2mまで削孔できる。あらかじめコンクリート面と並行に固定したアングル材の上を自走する。

 ドリルの先端の位置を調整してコンクリート面に触れるよう調整すれば、スイッチ1つで削孔を始める。深さ1mの削孔に要する時間は約4分。手持ち式ドリルを作業員が操作するのと変わらない速さだ。

施工記録の自動化で事務負担軽減

 開発したマシンは、ドリルの削孔速度を常時計測。鉄筋に当たると速度が急激に落ちるため、自動で停止して鉄筋の損傷を防ぐ。コンクリートの配筋には多少の施工誤差が生じるので、鉄筋の位置を事前に非破壊探査で特定する。ただし、表面からの探査では深い位置の推定精度が下がるため、鉄筋に気づかずドリルで傷つけることは珍しくなかった。

 大径用では粉じんの飛散対策を施した。ドリルの刃の周囲に取り付けた集じんカップをコンクリート面に押しつけ、発生した粉じんを吸引して集める。回収してタンクに集めた粉じんの廃棄や、削孔を繰り返して熱を持ったドリルの交換は人が実施する。現時点では作業員による定期的な作業チェックが必要だ。

 施工の記録をデータとして残せるのもロボット化の利点の1つ。削孔した位置や深さ、箇所数を全て記録し、無線でパソコンに転送する。管理者はデータを基に出来形調書などを作れるので、事務作業の削減につながる。