PR

 「発注者にとっての契約とは、大したペナルティーもなく取り消せるほど軽いのか」。静岡県湖西市の建設会社、アドシステムの社長は憤る。

 同社は2018年11月、積算ミスがあったとして水道管敷設工事の契約を解除した湖西市を相手取り、静岡地裁に提訴した。求めたのは、契約解除で仕事を失った約3カ月間の固定費の補填など約800万円の支払いだ。市は「金額が折り合わない」として係争が続いている(写真1)。

写真1■ 湖西市役所。訴えを起こした建設会社の社長は、「契約解除した後に、市の担当者はみんな異動してしまった」と嘆く(写真:日経コンストラクション)
写真1■ 湖西市役所。訴えを起こした建設会社の社長は、「契約解除した後に、市の担当者はみんな異動してしまった」と嘆く(写真:日経コンストラクション)
[画像のクリックで拡大表示]

 アドシステムが問題の工事を市から受注したのは17年11月のこと。一般競争入札で落札し、約1400万円で市と契約した。最安値で応札した鈴喜組(湖西市)は、最低制限価格を下回ったので失格となった(図1)。

図1■ ミスが無ければ別の会社が受注
図1■ ミスが無ければ別の会社が受注
問題があった水道管の敷設工事の入札結果。価格は税抜き。湖西市の資料を基に日経コンストラクションが作成
[画像のクリックで拡大表示]

 アドシステムは早速、協力会社や資材の手配を進め、施工計画などの書類作成にも着手。18年3月の工期まで他の仕事を断り、現場に乗り込む準備をしていた。

 積算ミスは契約の直後に判明した。市が鋼材のスクラップの単価を誤って、予定価格が正しい値よりも数万円高くなっていたのだ。市が積算ミスを犯していなければ予定価格とともに最低制限価格も下がり、鈴喜組が最低制限価格を上回って落札するはずだった。市の担当者は当初、設計変更による減額をアドシステムに相談してきたという。