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梅雨前線の影響で7月3日から降り続く大雨によって、熊本県南部を中心に落橋や浸水、土砂崩れの被害が多発した。前線は日本列島に1週間以上停滞し、九州北部や東海地方でも猛威を振るった。死者・行方不明者は80人を超えた。(2020年7月豪雨取材班)
活発な梅雨前線の影響に伴う豪雨で、今年も甚大な被害が発生した。2020年7月4日には熊本県南部で、1級河川の球磨川の氾濫や落橋、土砂災害などを引き起こした(写真1)。
特に、球磨川の中流域で浸水被害が拡大した。球磨村では、特別養護老人ホーム「千寿園」が激流にさらされ、入所者の14人が死亡した。川が山あいの狭さく部に流れ込む手前で、水かさが増えやすい地形だった。加えて、千寿園は支川の小川との合流点にあり、増水した本川の流れにせき止められて支川の水位が急激に上がる「バックウオーター現象」が生じた可能性がある。
さらに上流の人吉市では球磨川の決壊や越水が集中して、市街地の建物の1階が全て浸水するほどの大被害となった(写真2、3)。場所によっては10m近い浸水深を記録した(図1)。総務省消防庁によると、球磨村、人吉市だけで死者・行方不明者は44人に上る(7月13日午後2時時点)。
ただし、九州南部での被害は始まりにすぎなかった。その後、梅雨前線は1週間以上にわたり日本列島に停滞を続け、九州北部や東海地方などで連日のように被害が報告された。全国では80人を超える死者・行方不明者を出す記録的な災害となっている(図2)。気象庁はこの大雨を「令和2年7月豪雨」と命名した。
図2■ 死者・行方不明者は80人を超える
都道府県 | 人的被害(人) | 住家被害(棟) | |||
死者 | 行方不明者 | 負傷者 | 床上浸水 | 床下浸水 | |
岩手県 | ─ | ─ | ─ | ─ | 4 |
栃木県 | ─ | ─ | ─ | ─ | 2 |
千葉県 | ─ | ─ | ─ | ─ | 1 |
神奈川県 | ─ | ─ | 1 | ─ | 2 |
富山県 | ─ | 1 | ─ | ─ | ─ |
長野県 | 1 | ─ | 2 | ─ | 36 |
岐阜県 | ─ | ─ | 1 | 66 | 205 |
静岡県 | 1 | ─ | ─ | ─ | ─ |
愛知県 | ─ | ─ | ─ | 1 | 19 |
奈良県 | ─ | ─ | ─ | 1 | 2 |
和歌山県 | ─ | ─ | 1 | ─ | 1 |
広島県 | ─ | ─ | 1 | ─ | ─ |
山口県 | ─ | ─ | ─ | 17 | 189 |
愛媛県 | 1 | ─ | 1 | 4 | 57 |
福岡県 | 2 | ─ | 2 | 1458 | 3455 |
佐賀県 | ─ | ─ | 2 | 16 | 84 |
長崎県 | 1 | - | ─ | 20 | 48 |
熊本県 | 64 | 4 | ─ | 5058 | 1928 |
大分県 | 1 | 5 | 2 | 123 | 192 |
宮崎県 | ─ | ─ | ─ | 2 | 1 |
鹿児島県 | ─ | 1 | 4 | 96 | 315 |
合計 | 71 | 11 | 17 | 6862 | 6541 |
7月13日午後2時時点(資料:総務省消防庁)