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変形労働時間制の導入で残業削減

 一定の期間を平均した労働時間が週40時間以下であれば、特定の日や週に、法定労働時間である1日8時間、週40時間を超えた所定労働時間を定められる。この場合、1年単位、1カ月単位、1週間単位の変形労働時間制を構築できる。

 建設産業では、年末や年度末が繁忙期、春から夏にかけては閑散期という場合が多い。変形労働時間制の導入は、労働時間をコントロールするうえで有効な方法となる。

 例えば、ある建設会社は年間変形労働時間制を活用して、繁忙期の残業時間を削減した。残業がほとんどない閑散期(4~7月)の1日の所定労働時間を1時間短縮して7時間に設定。4カ月間で捻出した計約80時間分の所定労働時間を繁忙期(12~3月)に回し、その期間は毎週土曜日を出勤日に改変した。これによって、繁忙期の残業時間が1カ月当たり平均で20時間に減少した(図6)。

図6■ 閑散期の労働時間を繁忙期に
図6■ 閑散期の労働時間を繁忙期に
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メリットが多い多能工の育成

 前回の記事で述べたように、建設産業への若者の入職と定着を促すには、残業を減らして休日を増やす取り組みが重要だ。しかし、単に1人当たりの労働時間を減らすだけでは、必要な業務量をこなせなくなる。従業員を増やさずに労働時間を減らすには、業務の効率化が不可欠だ。

 ICT(情報通信技術)の活用や多能工の育成などは、その有効な手段となり得る。とりわけ、多能工の育成はメリットが多い(図7)。

図7■ 多能工化は経営者と従業員の双方にメリット

[経営者にとってのメリット]

  • 工種の入れ替えがないので、工期の手戻りがなく、コストを抑えられる(生産性向上)
  • 従業員のやる気が向上する(生産性向上)
  • 従来の業務範囲を超え、より広範な業種を一括で受注できる(建設会社の業務範囲拡大)
  • 技術革新や新工法に対する適応力が向上する(事業範囲の拡大)
  • 仕事の繁閑への対応力が向上する(人材の有効活用)

[技能者にとってのメリット]

  • 活躍できる場所が拡大するため、安定した雇用が得られる(業務の平準化)
  • 取得した資格などに応じた給与・地位の向上が望める(技能者本人の待遇改善)
  • 複数職種の習得によって職務満足度を高めやすい(従業員満足度の向上)

 従業員にとっては、活躍の場が広がり、安定した雇用が得られる。複数の職種を習得しておけば、プロジェクトの完成時まで現場に携わりやすくなり、仕事への満足度が高まる。

 雇用主にとっては、工種の入れ替えがなくなるため、工程間の手待ちや手戻りの発生を防止できる。それによって、工期の短縮やコストの抑制を実現できる。多能工の活用による工期短縮の手法や効果については、書籍「建設版 働き方改革実践マニュアル」で詳しく説明しているので参考にしてほしい。

建設版 働き方改革 実践マニュアル

 「『働き方改革』とは、『休み方改革』ではない。建設業は自然を相手に戦う仕事だ。予定通りの時間に仕事を終えたり、休んだりすることは容易ではない」(本書「はじめに」)

 国土を造り、国土を守るという「働きがい」のある仕事を実感できる職場環境をつくることこそが、真の「働き方改革」だという。従業者が職場に「働きやすさ」と「やりがい」を感じられれば、人材の定着や労働生産性の向上につながるからだ。

 本書では、人手不足に悩む建設産業に必要な職場づくりの実践手法を紹介している。

著者:降籏達生 編者:日経コンストラクション 判型・ページ数:A5判、216ページ 定価:本体3200円+税 発行日:2019年9月24日 発行:日経BP 発売:日経BPマーケティング