全3252文字

若手が仕事にやりがいを感じられなければ、すぐに会社を辞めてしまうだろう。職場に定着させるには、仕事への主体性や創造性、情熱を引き出す環境作りが重要だ。上司や同僚との信頼関係で生まれる「心の安全基地」を構築することがその第一歩となる。職場を安全基地に変えるには、それぞれの個性に応じた接し方をする必要がある。若手が「安全基地内にいる」と思えれば、困難な仕事に立ち向かい、自身の成長を実感できるはずだ。(日経コンストラクション)

 「建設版 働き方改革」とは、働きやすさとやりがいを備えた「働きがい」のある職場を実現することだ。

 前回までは、心理学者のアブラハム・マズローが唱えた欲求5段階説に基づいて、働きやすい職場の作り方を説明した。今回から、やりがいのある職場の在り方を考える。

 マズローによると、第1段階の生理的な欲求(待遇良く働きたい)と、第2段階の安全の欲求(安全に、安心して、安定して働きたい)が満たされると、第3段階の「所属と愛の欲求」が現れる。職場でいえば、同僚と「仲良く働きたい」と思う欲求だ。この欲求に応えるには、職場が「安全基地」となり、社員の心理的な安全性を高められるようにすることが重要だ。

 では、安全基地とは何か。例えば、建設現場の担当者が新しい技術を使いたいと思ったとしよう。上司に相談した際に、「思い切ってやってみろ。うまくいかなくても、最大限フォローする」と言われれば、担当者は果敢に挑戦できる。たとえ失敗しても、担当者は成長し、やる気も向上する。このような場合、担当者にとって上司が安全基地の役割を果たしている。

 社員は、上司との信頼関係で生まれる「心の安全基地」によって、新しい仕事や困難な仕事に立ち向かえるようになる。万一の場合は、上司が支えてくれるという確信があればこそ、仕事にまい進できるのだ。

 このように、自分は安全基地内にいると感じる気持ちを「心理的安全性」という。社員一人ひとりが安心して、自分らしく働けることだ。自分らしく働ける場とは、自己認識、自己開示、自己表現できる環境を指す。

 世界的に著名な経営コンサルタント、ゲイリー・ハメルは自著「経営は何をすべきか」で、能力のピラミッドについて解説している。その際に、「従順」「勤勉」「専門性」「主体性」「創造性」「情熱」の順で、6段階のレベルを設定している。

 心理的安全性が高まると、レベル4の主体性、レベル5の創造性、レベル6の情熱を、それぞれ引き出せるようになる。反対に、心理的安全性が低いと、レベル1の従順、レベル2の勤勉、レベル3の専門性といったレベルにまでしか到達できない。

 生産性に寄与する心理的安全性が高い建設会社は少ない。むしろ、低い建設会社が多い。心理的安全性を高めるには、個人面談や交換日誌、懇親会、慰安旅行などが有効だ。書籍「建設版 働き方改革実践マニュアル」では、それぞれの実践方法を詳述しているので参考にしてほしい。