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「会社は自分のものだ」という当事者意識を持てれば、若手は職場に定着する。「成長して働きたい」「喜ばれて働きたい」という欲求を満たし、仕事に対する内発的な動機付けを高めることが重要だ。その際、「人を育てる」だけでなく「人が育つ」土壌を作る視点が必要になる。上司が部下のそばにただ寄り添い、困ったときにだけ支援する「ただそばに立っている管理」も有効だ。若手の自主性を引き出す取り組みが欠かせない。(日経コンストラクション)

 心理学者のアブラハム・マズローの欲求5段階説に従って、働きやすさとやりがいを備えた「働きがい」のある職場の実現を目指す「建設版 働き方改革」──。最終回は、第5段階の「自己実現の欲求」を中心に、若手の定着を促す職場作りを考える。

 「自己実現の欲求」とは、「成長して働きたい」という欲求に当たる。人が職場で成長を感じるのは、仕事で成果を上げた時だ。建設会社で成果を上げるには、「能力」「熱意」「考え方」の3つの資質を備えていなければならない(図1)。社員が仕事を通して3つの資質を高められれば、自身の成長を実感できるようになる。

図1■ 成果に必要な3資質
図1■ 成果に必要な3資質
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 施工管理技術者の場合、技術力と対応力、管理力の3種類の「能力」が必要だ。技術力は、「品質」「原価」「工程」「安全」「環境」の5つに分類される。例えば、「品質」とはいい物をつくるための知識と経験で、「原価」はできるだけ低いコストで施工するための知識と経験を指す。

 知識は4段階に分けられる(図2)。1段階目の「雑識」とは、インターネットなどから得る雑然とした情報だ。それらの情報を整理して工事現場で使えるようにした状態が2段階目の「知識」に当たる。3段階目の「見識」がある状態に至るには、実体験などの経験が要る。さらに、それを「胆識」まで高めるには決断力が必要となる。「知識」「見識」「胆識」こそ、現場に不可欠な能力と言える。

図2■ 知識を4段階に区分
図2■ 知識を4段階に区分
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 施工管理技術者は、対応力(コミュニケーション力)も備えていなければならない。対応力は5段階に区分できる(図3)。まずは、「アプローチ力」で、顧客や近隣住民らとスムーズに話せる関係を築く。次いで、「ヒアリング力」で彼らの要望を聞いて、計画や施工に反映させる。「ライティング力」で適切な施工方法を提案し、「プレゼンテーション力」で相手の心をつかむ。最後に、「クロージング力」で、相手の「ノー」を「イエス」に変える。

図3■ 5段階のコミュニケーション力
図3■ 5段階のコミュニケーション力
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 工事現場では、「品質」「原価」「工程」「安全」「環境(自然、周辺、職場)」の各管理を実施しなければならない。管理とは、PDCAサイクルを回すことだ(図4)。計画を作成して(Plan)、実行し(Do)、点検して(Check)、改善する(Act)。実践するには、「技術力」と「対応力」の駆使が欠かせない。これらを「管理力」という。

図4■ 業務フローごとのPDCA
図4■ 業務フローごとのPDCA
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