2018年の西日本豪雨や19年の台風19号では、河川堤防が決壊。広域にわたる浸水被害をもたらした。決壊をもたらす大きな要因は「越水」だ。地球温暖化の影響も疑われる近年の降雨を見ると、もはや河川堤防の越水リスクは無視できない。越水を考慮に入れた堤防構造を巡る行政の混乱と技術の可能性を探った。

特集
消された堤防
目次
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もう越水破堤から目を背けられない
2019年に東日本を中心に猛威を振るった台風19号。激しい雨を伴った台風は、各地で堤防の決壊を招き、甚大な浸水被害をもたらした。決壊の主因は越水だ。
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性能見えぬスーパー堤防
一般の河川堤防は計画高水位以下での安全性確保を目指す。だが、近年は大雨が頻発。越水を無視できなくなった。越水に耐える堤防が、スーパー堤防だ。
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頭や尻を隠して破れにくい堤防に
2015年に鬼怒川の堤防決壊がもたらした大規模な被害を受け、国土交通省が施策に掲げた「危機管理型ハード対策」。2020年度までに進める事業を検証した。
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先端堤防は30年前に存在
危機管理型ハード対策に先立ち、堤防の天端や裏法尻の保護などの越水対策を採用した堤防は、過去に建設されている。さらに一歩踏み込んだ内容で。
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設計指針から消えた幻の堤防
今から約20年前、国は越水に対する抵抗性を見込んだ堤防の新構造を設計指針にまとめた。だが、その斬新な発想はわずか2年で姿を消す。幻の堤防構造を探る。
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リスクだけ切り取られた越水実験
堤防の裏法にシートを敷いて越水時の侵食に抵抗する。その性能を土木研究所は実大実験で確かめた。同研究所は課題を挙げる一方、効果も認めていた。
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堤防の進歩を止めた時間と向き合え
国土交通省は越水に対する堤防性能を複数の視点から研究した。結論は似ていたが、対応は真逆に。堤防の技術や施策を見つめ直す時機が訪れている。