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2019年に東日本を中心に猛威を振るった台風19号。激しい雨を伴った台風は、各地で堤防の決壊を招き、甚大な浸水被害をもたらした。決壊の主因は越水だ。

 2020年1月10日時点で計102人もの死者・行方不明者を出した19年10月の台風19号。被害を大きくした要因の1つが、堤防の決壊が招いた浸水被害だ。この台風では、全国140カ所の堤防が決壊。国土交通省が管理する河川だけでも千曲川や那珂川、都幾川などの堤防12カ所が決壊に至った(写真1)。

写真1■ 写真は茨城県常陸大宮市下伊勢畑で破堤した那珂川の堤防。川表側は連節ブロックなどで過去に堤防を補強していた(写真:日経クロステック)
写真1■ 写真は茨城県常陸大宮市下伊勢畑で破堤した那珂川の堤防。川表側は連節ブロックなどで過去に堤防を補強していた(写真:日経クロステック)
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 国交省は有識者による調査委員会を設け、現地の状況や土質などを基に、各河川堤防の決壊を招いた原因やメカニズムを分析。19年12月までに、決壊原因の推定が進んだ。

 その結果、国が管理する堤防で破堤に至った12カ所のうち、10カ所は河川を流れる水が堤防を越えて陸地側に流れ込む「越水」が主な原因だと推定された(図1)。残る2カ所は住宅などが立つ堤防の内側から河川側に向けての越水が主因だと分析されている。

図1■ 国が管理する河川堤防の決壊原因の大半は越水
河川名 位置 決壊をもたらした推定要因の影響度
越水 浸透 侵食 堤内地からの越水
那珂川 右岸28.6k × ×
左岸40.0k
右岸41.2k ×
都幾川 右岸0.4k × ×
越辺川 右岸0.0k × ×
左岸7.6k × ×
久慈川 左岸25.5k × ×
左岸27.0k ×
右岸25.5k × ×
千曲川 左岸57.7k × ×
阿武隈川 左岸98.6k
吉田川 左岸20.9k
台風19号で決壊した国が管理する堤防について、有識者などで構成する調査委員会が推定した破堤原因。影響度が大きいと推定された項目順に○、△、×となる。2019年12月時点での報告に基づき、日経クロステックが作成

 越水によって堤防が決壊するメカニズムは次のようなものだ。まずは堤防を河川の水が乗り越えると、土でできた堤防の法面下部に当たる法尻や上部の天端が侵食される。足元が侵食された堤防では、その上部の堤体が崩れる。こうした作用の繰り返しで、堤防は痩せ細っていく。最終的に土でできた堤防が水に押し流されて、決壊に至る。