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設計上の越流水深は15cm

 スーパー堤防に対する理解を広げるうえでは、先に紹介したような施設の捉え方に加え、具体的な性能を十分に伝えられていない点にも改善の余地がある。

 設計で見込む越水規模はその一例だ。高規格堤防を計画する河川では、毎年200分の1の確率で生じる洪水を想定した安全性を基本的な目標に掲げる。これは、越水を想定しない安全性だ。

 では、スーパー堤防はどの程度の確率で生じる越水に対応できるのか。国交省によると、具体的な雨量や流量に基づいて性能を決めているわけではないという。越水に関して技術的に明確な数字は、堤防表面での越流水の水深15cmだ。

 これはスーパー堤防を整備する全河川に共通した値となっている。数字の根拠について、中須賀企画専門官は次のように説明する。「堤防に満杯の水が流れた際に、流れが波打つと平均的に15cmくらいの高さで越流が起こるとみなして定めている」

 この15cmという数字、国交省が一般向けにスーパー堤防を説明する様々な資料を見ても、まず見当たらない。河川管理施設等構造令や同施行規則などに関連して、越水に対する安全性を確認するための数式は明示されているものの、そのパラメーターの数値や数値の意味を把握するのは難しい。

 一般に水面は横に広がるので、越流水深はいくらでも増大する数値ではないという。河川工学を専門とする山梨大学の末次忠司教授は、「河川の流量が増大しても越流水深はそれほど増えない。スーパー堤防で見込む15cmは妥当な数字だ」と説く。

 越流水深やその数字の意味などを十分に説明しないままスーパー堤防の安全性を強調しても、その機能を理解してもらうのは難しい。どんな状況にも耐えられるという誤解を生み、避難が遅れる恐れもある。

 社会に正しくスーパー堤防を理解してもらうためには、その設計性能と妥当性をより分かりやすく示す必要がある。そのうえで、事業コストなどと比較して整備の是非を議論していかなければならない。


 スーパー堤防は大都市だけで整備され、その完成区間はごく一部に限られる。近年の豪雨がもたらす水害を踏まえ、実は全国で急速に進む越水対策がある。スーパー堤防よりも簡易な方法で実現できる危機管理型ハード対策だ。