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斬新な堤防で越水に耐えた事例も

 馬洗川と同様に天端と裏法尻、裏法の3カ所に構造物を設けた堤防で、越水を経験した事例がある。茨城県などを流れる那珂川のフロンティア堤防だ(図3)。19年の台風19号が越水をもたらした。

図3■ 那珂川で断続的に整備された新型堤防
図3■ 那珂川で断続的に整備された新型堤防
那珂川で整備されたフロンティア堤防の設置箇所。整備延長は合計約9kmに及ぶ(資料:国土交通省)
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 水戸市田谷町地区で断続的に2kmほどの長さにわたって整備され、2000年度に完成した区間はその1つだ(図4)。天端の舗装、裏法尻のドレーンに加え、裏法には吹い出し防止シートを入れた(図5)。

図4■ シートに大きな損傷は見当たらない
図4■ シートに大きな損傷は見当たらない
那珂川で越水を考慮に入れたフロンティア堤防を整備した区間と越水が生じた箇所の一部を示す。左上の写真は越水が生じた地点で認められた被害。裏法の表層は削れているものの、シート自体に大きな被害は見当たらなかった(資料:国土交通省)
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図5■ 裏法対策を講じたフロンティア堤防
図5■ 裏法対策を講じたフロンティア堤防
那珂川のフロンティア堤防の断面図。国土交通省の資料を基に日経クロステックが作成
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 継続時間や越流水深は分析されていないものの、この整備区間の一部で越水が生じた。さらに、越水区間の一部では、裏法側の表層が削れてシートが露出する被害が出た。それでも、シート自体に大きな損傷は認められなかった。

 この堤防が整備された時期には、建設省が建設白書にフロンティア堤防の整備推進を掲げていた。同堤防は那珂川の他にも、三重県内を流れる雲出川などで採用。雲出川では約48億円の事業費で、延長1.1kmにわたって整備された。


 実は、那珂川で用いられた斬新な堤防構造は、国がそれまでの研究や調査の結果を踏まえて、一度堤防の設計方針としてオーソライズした内容に沿うものだ。だが、その構造は、今や幻の存在となっている。