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堤防の裏法にシートを敷いて越水時の侵食に抵抗する。その性能を土木研究所は実大実験で確かめた。同研究所は課題を挙げる一方、効果も認めていた。

 越水に対して河川堤防を粘り強く抵抗させる目的で、国土交通省は危機管理型ハード対策を導入した。ただし、過去に建設省がまとめた堤防の設計指針で示した越水対策のうち、堤防の天端の保護と裏法尻の補強という点では同種の考えを盛り込んだものの、シート材で覆う裏法の保護は取り入れなかった。

 2018年11月に開催された参院の国土交通委員会。当時の国土交通大臣であった石井啓一氏は、山添拓参院議員の質問に回答する格好で、その理由を明らかにしている。少し長くなるが、発言の趣旨は以下のような内容だ。

 「実物大の大型堤防を用いて越流の実験を行ったところ、遮水シートを裏法に敷いて継ぎ部を接着しない場合には、継ぎ部への流水の集中に伴って裏法面の侵食が急激に進行するという実験結果がある。そのような懸念があるので、現時点では堤防裏法面の対策を実施していない」

 石井前大臣が指摘した継ぎ部への流水集中によるリスクは、土木研究所の報告書からうかがい知れる。「河川堤防の耐侵食機能向上技術の開発(1)」と題する研究で、06年度から10年度にわたって実施された。

 この研究で行われた実大実験は以下のような内容だ。まずは、実大の堤防形状を、高さ3.5m、天端幅3m、裏法勾配1:3に設定した(図1)。実験用堤防の延長は4.8mに及ぶ。堤体に用いたのは、2mmの粗さのふるいを通る砂の質量が全体の60%を占めるような混合砂だ。その透水係数は毎秒10×10-5cmだった。

図1■ 実大の堤防模型でシート性能を実験
[平面図]
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[A-A’断面]
[A-A’断面]
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堤防の実大模型の概要。土木研究所の資料に基づき日経クロステックが作成

 そして、この堤防の裏法に何も施工しない場合、遮水シートを敷いた場合、吸い出し防止シートを敷いた場合の3つの構造で越水に対する性能を確かめた。

 遮水シートでは継ぎ部を溶着せずに30cm重ねたケースを、吸い出し防止シートでは溶着した場合と溶着せずに15cm重ねた場合、同じく30cm重ねた場合の計3通りのケースを、それぞれ実験した。実験ではシートを保護するための表土は被せていない。より厳しい条件を採用している。

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