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せっかく採用したのにすぐ辞めた──。そんな若手があなたの周囲にいないだろうか。彼らは何を思い、何を考えたのか。入社早々に転職を決意した若手2人の実話からひもとく。建設業界に勤めながらも、入社前後のギャップに戸惑う若手の姿が見えてきた。

現場で理不尽な扱い
先輩との同居で限界に

 「劣悪な就業環境だった」。伊藤恭平(仮名、敬称略)は建設会社をわずか2年で辞めた理由をこう語る(写真1)。

写真1■ 伊藤は市街地から離れ、土地勘がない地方の現場に配属された。写真はイメージ(写真:日経コンストラクション)
写真1■ 伊藤は市街地から離れ、土地勘がない地方の現場に配属された。写真はイメージ(写真:日経コンストラクション)
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 伊藤は東京都内にある大学の土木系の学科を卒業後、準大手のA社に就職した。ところが、現在は出身地の自治体に勤めている。転職を決意したのは、A社の職場の人間関係に耐えられなかったからだ。

 伊藤が配属されたのは地方の橋梁工事現場。伊藤とベテランの所長の他に、年の離れた先輩社員が2人いた。この先輩社員が鬼門だった。

 伊藤が1人きりで測量する先輩を手伝おうとすると、「邪魔だから要らない」と突っぱねられた。逆に伊藤が手伝わないでいると、「どうして何もしないのか」と怒鳴られた。先輩の理不尽さを所長に訴えようにも、「所長は見て見ぬふりをしていた」と伊藤は憤る。

 劣悪な環境は職場にとどまらない。居住環境も伊藤を追い詰めた。会社からあてがわれたのは、現場近くにあるアパートの1室。2LDKで先輩との2人暮らしを強いられた。

 気が休まるのは、伊藤が帰宅してから先輩が戻るまでのわずかな時間だけ。市街地から離れ、土地勘がない地方なので、外出して気分転換するのも難しかった。

大きな期待が大きな失望へ

 「スケールの大きな構造物を造り、達成感を味わえるよ」。伊藤は就職活動をしていた学生時代、大学のOBでもあるA社のリクルーターからこのように聞き、魅力を感じて入社した。伊藤が想像したのは、様々な工夫を凝らして現場を指揮し、構造物を造り上げる仕事だった。

 しかし、実際は違っていた。「建設会社は、発注者からの命令を下請けの会社や作業員に伝えるだけ」(伊藤)。構造物を自ら造るという実感は得られなかった。

 「たとえ人間関係や居住環境が悪くても、仕事にやりがいさえ感じていれば、辞めなかったかもしれない」と伊藤は言う。就活時に良い話ばかり聞いた分、失望は大きかった。

 伊藤が去った現場には3年目の若手が再び配属されたものの、1年足らずで辞めたという。「あの現場は若手に向かないのではないかと上司に伝えたのに。若手の声に耳を傾けない会社なのだろう。早めに辞めてよかった」と伊藤は振り返る。

 伊藤にとって、現在の自治体での仕事が建設会社と比べて圧倒的に楽しいわけではない。それでも、「閉鎖された環境ではないし、人間関係も悪くない。前職よりずっと良い」と伊藤は語る。