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人手不足にあえぐ建設業界で急成長する会社がある。東京都港区に本社を置く中央建設だ。過去5年間で社員数は4倍、売上高は5倍に増えた。営業の決めぜりふは「ウチの会社には人がいますよ」。同社の渡部功治社長に人材獲得の極意を聞いた。

中央建設 社長
渡部 功治氏

1972年生まれ。2005年に愛媛県今治市にある中央建設に専務として入社。当時の社員数は3、4人で売上高は1億円ほど。社長就任後の10年に東京進出を決めるとともに、公共工事から民間の建築工事へシフト。現在の社員数は約100人、19年6月期の売上高は56億5000万円(写真:日経クロステック)

2015年に社員27人、売上高11億円だった会社が、合併や買収をすることなく現在は100人、56億5000万円です。成長の理由は何でしょうか。

 私が05年に経営を引き継いだ中央建設は、愛媛県今治市にある社員数3、4人、売上高1億円ほどの会社で、自治体の土木工事を受注していました。入札に参加できるのは最低ランクの小さな工事ばかり。公共工事が減るなか、金魚鉢の中の争いを続けていました。

 いずれ水場は干上がる。東京に出て井戸を掘り、新しい水脈を見つけようと一念発起しました。狙ったのは公共工事よりも自由に勝負できる民間の建築工事です。

 売り上げが伸びているのは社員が増えているから。仕事が取れたから人を増やすのでは順番が逆です。

 まずは08年に定年を70歳に引き上げました。ハローワークから紹介してもらい、60代の技術者を積極的に採用しました。60代の人は「5年いてくれれば十分」という感覚がないと採用できません。ただ、ベテランなので現場の施工管理を任せられる。

 最近は当社のホームページを見て、直接応募してくれる人も増えました。若い人材も増えており、現在の社員の年齢構成は20、30代が3割、40、50代が3割、60代が4割です。今後は新人を育てられる環境を整え、21年までに新卒採用も始めたいと考えています。

 今は会社の成長段階。金融機関は利益を重視しますが、人の採用こそ利益を生む源泉になります。私がリスクを冒して社員を増やすのは、着地点が見えているからです。人の価値は3年、5年で倍になります。

人材獲得のこつはありますか。

 私が行う社長面接だけで、採用の可否を判断していることでしょうか。採用の打率はだいたい半分です。

 人づてによる採用はほとんどありません。社員を頼って「知り合いの知り合い」を紹介してもらう採用は避けています。大事なのは私と一緒に井戸を掘ってくれるか、私の精神に共感してくれるかという点です。社員にも共感してもらったうえで入社してほしい。

 だから、採用活動を他人に任せていない。人事担当者の多くは、応募してきた人を落とすことしか考えないでしょう。役員の面接でも積極的なふるい落としが目的になる。

 合否は面接の当日か翌日に連絡します。優秀な人材が他社に流れてしまうことも防げる。面接中に採用を即決した人もいます。

給与や待遇面でも同業他社より競争力があるのでしょうか。

 給与水準は良い方だと思います。社長が頑張って利益の出る工事を取っていますから(笑)。

 面接中にそろばんを弾いて前職よりも良い条件を提示します。前職の会社の規模にもよりますが、多くの社員は給与が1.2倍ほどに上がっている。同規模の会社からの転職ならもっと上がるでしょう。転職エージェントに話を聞くと、当社を希望する転職者は売上高1000億円超の準大手や中堅の建設会社と比べているそうです。

 採用にはリスクも伴います。一方通行の電子メールだけ送ってきて、ある日突然辞める人もいます。仮に採用から半年ほどで辞められたら、会社は約800万円の損失です。

 定着率を上げるため、地方出身者のための社宅なども用意していますが、辞める人は辞める。そこでウジウジしていたら採用はできません。