全2600文字
PR

少子化で学生の絶対数が減るなか、まずは建設業界を志す人材を増やさなければならない。しかし、個々の会社での取り組みには限界がある。就労環境の改善や就職活動の在り方を業界全体で変えていこうとする動きがある。

 若手を採用しようにも応募者さえ集まらない。ようやく若手が入社しても、すぐに辞めてしまう。残った社員は高齢化し、新しい人材の獲得や育成に十分な人手を割けなくなる──。中小建設会社の多くでこうした「負の連鎖」が起こっている。

 個々の会社だけで採用の課題を解決するのはもはや難しい。そこで、東京都内にある約140の中小建設会社で構成する東京都中小建設業協会は、協会を挙げて会員企業の改革に取り組み始めた。

 協会が活用したのは、東京都と東京しごと財団が2018年度に創設した「採用力スパイラルアップ事業」と呼ぶ制度だ。財団が人材確保などに課題を抱える業界団体を選定。業界団体は2年間にわたり、会員企業の課題解決に向けた活動を展開する。都が1団体当たり5000万円を上限に費用を負担する。

 東京都中小建設業協会は人材サービス会社のアデコと組み、19~20年度の事業実施団体の1つに選定された。同時期に選ばれたのは、東京都塗装工業協同組合や東京都民間保育園協会など、いずれも人材確保に苦戦する業界の団体だ。

 採用力スパイラルアップ事業の一環で東京都中小建設業協会は19年夏、会員企業などを対象に課題を抽出するためのアンケート調査を実施した(図1)。回答企業の9割は社員数70人未満の建設会社だ。

図1■ 東京都中小建設業協会がアデコと共同で会員企業を無料コンサルティング
(資料:東京都中小建設業協会)
(資料:東京都中小建設業協会)
[画像のクリックで拡大表示]
協会がアンケート調査で中小建設業の課題を抽出
[抽出された主な課題]
  • 人手が足りない
  • 若い離職者が多く、高齢化が著しい
  • 「残業が多い」「休みが取りづらい」といった勤務形態が離職の理由に
  • 技術者に占める女性の割合が平均3.2%と女性活躍に大幅な遅れ
2019年8~9月
支援メニューの提示と選定
[提示した主な支援メニュー]
  • 会社別のコンサルティングの実施
  • 採用に成功している例を共有するセミナーの開催
  • 管理職のレベルアップを狙ったセミナーの開催
  • 資格の取得支援
19年9~11月
会社別のコンサルティングの実施(3~8回)
[コンサルティング内容の例]
  • 休暇取得の促進(新たな休暇制度の導入など)
  • 長時間所定外労働の削減(業務の棚卸しで課題を洗い出し、改善するなど)
  • 教育・育成体制の整備(人事評価制度の整備など)
  • 女性技術者の活用(女性が働きやすい環境の整備など)
  • 働き方改革や女性活躍をPRする採用活動の実施(取り組みを自社のホームページや求人票に反映するなど)
20年2月~21年3月
各社が求職者にアピール
働き方改革などに取り組んでいる建設会社として、協会主催の合同企業説明会で学生などに訴求
20年9月~
「採用力スパイラルアップ事業」の主な内容。取材を基に日経コンストラクションが作成

 アンケートの結果、問題の深刻さが改めて浮き彫りになった。

 例えば、20、30歳代の技術者の離職が多く、「社内の人間関係」や「仕事が合わない」といった理由で辞めていく。年間の休日数は平均106日で、土日祝日の合計よりも10日以上少ない。休暇を取得できない最大の理由は「人手不足」で、中には年間の休日数が「79日以下」と答えた会社もあった。休日数が年間79日以下の会社に、29歳以下の若手技術者は皆無だった。

 働き方改革への意識も希薄だ。「働き方改革をすると生産性が下がる」と答えた会社が3割ほどあった。

 「本腰を入れて業界を変えないと、誰も入ってこなくなる」。東京都中小建設業協会の鳥越雅人副会長は危機感を募らせる。