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 土木業界の採用活動を変えようと動いているのは企業だけではない。鳥取県では、大学生が主体となって地元の企業と交流を深めようとする取り組みが始まっている。

 中心となっているのは「ツナガルドボク」という学生団体だ(写真1)。企業と学生をつなぐ。鳥取県内の建設会社や建設コンサルタント会社で働く社会人と大学生とが交流するイベントを主催したり、企業の採用担当者に学生目線からアドバイスしたりしている。例えば、「インターンシップの学生を募集するなら、『力がつく』や『本音でフィードバックする』と宣言した方が学生に刺さりやすい」などと伝える。

写真1■ ツナガルドボクの運営メンバーら。前列左から3人目が宮内氏。左下はツナガルドボクのロゴマーク(写真・資料:ツナガルドボク)
写真1■ ツナガルドボクの運営メンバーら。前列左から3人目が宮内氏。左下はツナガルドボクのロゴマーク(写真・資料:ツナガルドボク)
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 ツナガルドボクは鳥取大学大学院2年生で土木を学ぶ宮内芳雄氏が2018年12月に立ち上げた。兵庫県出身の宮内氏は20年春、鳥取県内に本社を構える建設コンサルタント会社に就職する予定だ。

 ツナガルドボクを設立したきっかけは、宮内氏自身の就活体験にある。

 もともと大手企業を志望していた宮内氏。しかし、大手企業のインターンシップに参加したり説明会で話を聞いたりするうちに、自分には合わないと考えるようになった。

 「大手企業は仕事の分業化が進んでいるうえに顧客が見えづらいので、自分の仕事が役立っているという実感を得られにくい。会社を引っ張る経営者との距離も遠く、人柄や考え方が見えづらい」(宮内氏)

「地方の中小にはメリットしかない」

 大手企業に魅力を感じなかった宮内氏は、大学がある鳥取県内の中小企業に接触し始めた。

 大手とは違い地元の市民との交流が多く、経営者の人柄や理念もよく分かる。仕事をえり好みしている余裕がないので、様々な仕事を経験できる。IT化が遅れている会社であれば、若手の入社によって様々な革新を起こせるかもしれない。「地方の中小企業で働くことにはメリットしかないと思った」と宮内氏は明かす。

 しかし、鳥取大学で土木を専攻する約120人の学生のうち、鳥取県内の会社に就職するのは公務員を含めて数人。県内の会社は就職活動サイトに登録すらしていないところが多く、学生にとっては接触しづらいのだ。多くは大手企業に入ったり出身地である県外の公務員になったりする。

 「大手企業の社内競争について行けず、辞めてしまった友人がいる。なんとなく大手に入るのではなく、県内に就職するという選択肢があることを知ってほしい」と、宮内氏はツナガルドボクを立ち上げた。

 宮内氏はツナガルドボクの活動を「若者の居場所づくり」としても捉えている。

 「受験に失敗して落ち込んでいたり、生活費のために居酒屋でのアルバイトに精を出していたりするような学生は多い。インターンシップをはじめ、もっと大学の専攻に近いところで主体的に活動できる場があることを学生に伝えたい」と宮内氏は志を語る。

 宮内氏を含むツナガルドボクの立ち上げメンバー4人のうち留学中の1人を除いた3人は、鳥取県内の企業に就職する予定だ。19年4月には鳥取大学の新入生25人を新たな運営メンバーに迎えた。「数年後には、県内企業への就職者数が本格的に増え始めるだろう。まずは今の若いメンバーが業界に親しみ、将来を考えるきっかけにしてほしい」(宮内氏)