長い間、「きつい」「汚い」「危険」の3Kと皮肉られてきた建設現場の労働環境。そんな汚名を返上する切り札としてテクノロジーが台頭してきた。5GやAI(人工知能)、自動化などの導入によって、技術者や技能者をきつい作業から解放し、安全で奇麗な環境をつくり出す――。働きやすさを追求する次世代の現場を密着取材した。

さよなら3K
目次
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建設現場に5Gがやって来る
「遠隔地から重機を操作」に現実味
2020年春、いよいよ第5世代移動通信システム(5G)の商用サービスが始まる。映像など大容量のデータを超高速で通信でき、我々の生活が激変するといわれている。現場作業の遠隔操作が拡大すれば、現場に行かずに仕事を終える日が実現する。
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きつくて汚い「苦渋」作業から解放
ダム工事で10以上の自動化を検証する
建設現場には、作業員の体力や集中力をすり減らす、きつくて汚い作業が数多く潜む。こういった苦渋作業から作業員を解放する一手として導入を進めているのが、重機などによる自動化だ。大林組JVのダムの現場では、コンクリート工事を中心に、10以上の作業で自動化技術を試みる。
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こんな山岳トンネルなら危なくない
機械と隣り合わせでも死亡事故ゼロへ
「危険」の代名詞とされてきた山岳トンネルの現場が様変わりしそうだ。薄暗くて狭い坑内では、人と重機とが接触する事故が後を絶たない。AI(人工知能)やビーコンを使って人と重機の動きをデータ化すれば、工場のように安全に共存できる環境をつくり出せる。
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立体映像で「未来型の協議」を実現
新潟の建設会社が提唱する働き方改革
現場の生産性向上で、協議の改善に注目した小柳建設。SF映画のように立体映像を使った打ち合わせを、国の工事で実践中だ。移動時間の省略や情報共有の深化につながる「未来型の協議」とは。
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現場管理は4Kカメラにお任せ
「監視だけ」から高度化する映像活用術
近年、記録・再生や伝送の技術の発達に伴い、映像を使う業務が増えてきた。工事現場も例外ではない。東日本大震災の復興現場では4Kカメラによる映像を駆使し、AIで重機の台数を確認するなど、新しい現場管理の手法を模索している。
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人海戦術の道路管理に終止符を
全長250kmで損傷を予知する 「デジタルツイン」の力
膨大な量に上るインフラの点検は、現在の建設業界で「きつい作業」として定着した。阪神高速道路会社は、管理する全長250kmの道路を仮想空間に再現する「デジタルツイン」の採用を検討中だ。損傷や劣化を予測できれば、人海戦術に頼る点検や管理に終止符を打てる。
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「夜は書類」の働き方と決別せよ
作業単位からプロセス全体の改革へ
建設現場の作業単位では3Kからの脱却が見えてきた。一方で、建設プロセス全体では、「昼は現場作業、夜は書類作成」という働き方は変わっていない。改革を進めるための鍵は、全体最適を考えられる発注者が握っている。