全2569文字

現場の生産性向上で、協議の改善に注目した小柳建設。SF映画のように立体映像を使った打ち合わせを、国の工事で実践中だ。移動時間の省略や情報共有の深化につながる「未来型の協議」とは。

 遠隔地にいる人がホログラム(立体映像)として登場し、空中に浮かぶ3次元モデルを指さしながら複数人で会話する─。

 SF映画のワンシーンでの話のようだが、現実世界の話だ。それも国土交通省北陸地方整備局が進めている工事において、受発注者による設計照査の協議の場で実現した(写真1)。

写真1■ 国土交通省北陸地方整備局の大河津出張所長や小柳建設の現場担当者らが2019年度に実施した設計協議の様子(写真・資料:小柳建設)
写真1■ 国土交通省北陸地方整備局の大河津出張所長や小柳建設の現場担当者らが2019年度に実施した設計協議の様子(写真・資料:小柳建設)
[画像のクリックで拡大表示]

 この「未来型の打ち合わせ」を主導するのは、全国展開する大手建設会社ではない。新潟県三条市に本社を構える小柳建設だ。

 同社は2017年から日本マイクロソフトと共同で、Holostructionホロストラクションの開発を進めている。頭に装着するマイクロソフト製のHoloLensホロレンズを通して、現実の空間に3次元ホログラムなどを映す。MR(複合現実、Mixed Reality)技術を駆使したアプリケーションだ。

 VR(仮想現実)で一般に使うヘッド・マウント・ディスプレーは目が覆われるため、歩き回ると危ない。一方、ホロレンズは透明のレンズにホログラムが写るので、現実の世界も見える。

 ホロストラクションを採用したのは、北陸地整の大河津分水路改修工事の現場だ。分水路の流下能力不足を解消するために、川沿いの山地を掘削して川幅を広げる工事の一部を小柳建設が担う(図1)。

図1■ 総事業費1200億円のプロジェクトの一角を担う
図1■ 総事業費1200億円のプロジェクトの一角を担う
大河津分水路事業では河口部3.3kmにわたり流下断面を拡幅する。小柳建設の施工箇所は、左岸側の山地の一角。5万m3の土砂を掘削して搬出する(資料:国土交通省)
[画像のクリックで拡大表示]

 建設業界では、掘削工事における生産性向上の取り組みが盛んだ。ICT(情報通信技術)やIoT(モノのインターネット)による重機操作の無人化・遠隔化を目指す企業は多い。ところが、小柳建設が生産性向上で焦点を当てたのは、重機ではなく、受発注者間の定期的な打ち合わせだった。

 「協議は移動に手間がかかる。ここを改善できれば、働き方を大きく変えられるのではないかと考えた」。小柳建設の中靜真吾専務は、こう話す。現場代理人が常駐する現場と発注者がいる事務所とは、距離が離れているケースが多い。1回当たりでたとえ数十分間の移動でも蓄積すれば、大きなロスになる。

この記事は有料会員限定です

「日経コンストラクション」定期購読者もログインしてお読みいただけます。

日経クロステック有料会員になると…

専門雑誌8誌の記事が読み放題
注目テーマのデジタルムックが読める
雑誌PDFを月100pダウンロード

日経電子版セット今なら2カ月無料