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膨大な量に上るインフラの点検は、現在の建設業界で「きつい作業」として定着した。阪神高速道路会社は、管理する全長250kmの道路を仮想空間に再現する「デジタルツイン」の採用を検討中だ。損傷や劣化を予測できれば、人海戦術に頼る点検や管理に終止符を打てる。

 実在する橋や道路、環境をデータ化して、仮想空間に現実とそっくりな世界を構築する「デジタルツイン」。データをリアルタイムに集約しながら劣化や損傷を予測し、優先的にメンテナンスが必要な箇所を判断できるようになる。維持管理の手間や費用を大幅に減らせると期待値は高い。構造物内部の損傷にも気づきやすくなる。

 阪神高速道路会社は管理する道路の全長約250kmで、このデジタルツインの採用を試みている。高速道路の形状や重さ、素材、性質、強度などを仮想空間に丸ごと再現する考えだ(図12)。

図1■ 全長250kmの道路をデジタルツインに
図1■ 全長250kmの道路をデジタルツインに
全長250kmの高速道路の構造を簡略化して作った3次元モデル。今後、詳細化に取り組む(資料・写真:阪神高速道路会社)
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図2■ 仮想空間でのシミュレーション結果を道路のマネジメントに生かす
図2■ 仮想空間でのシミュレーション結果を道路のマネジメントに生かす
建設や管理段階のデータを損傷の予測といったシミュレーションに生かす「阪神高速サイバーインフラマネジメントシステム」の実現を目指す(資料・写真:阪神高速道路会社)
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 「阪神高速道路の約4割が開通から40年以上経過している。どう維持管理するかが課題だ。ハンマーや超音波を使って人が全て点検すると、膨大な時間と労力を要する」と、同社技術部技術推進室の茂呂拓実構造技術総括課長は話す。構造物の老朽化が進む一方で、点検や管理を担う人は不足している。これまでの人海戦術頼みの管理手法は転換を迫られている。

 仮想空間には、劣化や損傷の進み具合も再現できる。阪神高速は、斜張橋のケーブルを非破壊で検査する「ケーブル点検ロボット」、路面の劣化や舗装内部の損傷を走行しながら点検する車両「ドクターパト」などを維持管理で導入している(写真12)。

写真1■ 阪神高速道路で橋のケーブルの点検に使うロボット。仮想空間では、損傷や劣化の進行度も再現する(資料・写真:阪神高速道路会社)
写真1■ 阪神高速道路で橋のケーブルの点検に使うロボット。仮想空間では、損傷や劣化の進行度も再現する(資料・写真:阪神高速道路会社)
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写真2■ 阪神高速道路で路面の損傷を発見する点検車「ドクターパト」(資料・写真:阪神高速道路会社)
写真2■ 阪神高速道路で路面の損傷を発見する点検車「ドクターパト」(資料・写真:阪神高速道路会社)
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 これらのセンサーやロボットから得た構造物に関するデータを、リアルタイムで集約して仮想空間に反映する。