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施工者が設計に関与する「技術提案・交渉方式」の導入が全国で進んできた。国土交通省は2020年1月に運用ガイドラインを改定。さらなる普及を目指す。その一方で、設計・施工一括発注の総合評価落札方式「A型」は消えつつある。

 仕様を定めにくい工事を対象に、設計段階で施工者の知見を取り入れる「技術提案・交渉方式」。国土交通省は、2016年の淀川大橋床版取り換え工事を皮切りに、20年1月末までに直轄工事13件で適用した。

 既に工事が完了した案件も出始めている。ここで明らかになった課題を受け、国交省は20年1月に運用ガイドラインを改定した(図1)。

図1■ 2020年1月に技術提案・交渉方式の運用ガイドラインを改定
図1■ 2020年1月に技術提案・交渉方式の運用ガイドラインを改定
国土交通省の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 改定では、発注者の負担が大きかった部分を軽減する内容を盛り込んだ。例えば、施工者(設計時は「優先交渉権者」)のノウハウを反映して設計を変更する場合、これまでは常に発注者が間に入っていた。改定後のガイドラインでは、工費に影響しない軽微な変更は、施工者と設計者の間で決めてよいと明記した。

 また、施工者が設計に関与する「技術協力期間」が長くなりがちだったので、工事特性別に具体的な設定例を明示。適切な長さで期間を設定できるようにした。

 技術提案・交渉方式の普及の影で、消えつつあるのが総合評価落札方式の「A型」だ。技術提案・交渉方式と同様に、仕様の確定が困難な案件に適用する。13年に実施した総合評価落札方式の大幅見直しに伴い、従来の高度技術提案型の後継タイプとして登場した。

 ところが、高度技術提案型の適用数が12年度に全国で7件だったのに対し、13年度以降のA型はこれまで年間0~2件で推移している。A型に代わって、技術提案・交渉方式が登場した形だ。

 A型が設計・施工一括発注を前提としている点が、採用を妨げる要因となっているようだ。設計・施工一括の場合、設計を始める前の段階で、工事を含めて契約を結ぶ必要がある。

 「関係機関との協議を受けて、設計を進める過程で内容が変更されるリスクがある。設計・施工一括は、後になって工事費が膨らむケースが多いので採用しにくい」。国交省国土技術政策総合研究所社会資本マネジメント研究室の中洲啓太室長はこう説明する。

 その傾向は、技術提案・交渉方式にも表れている。同方式には、(1)設計・施工一括(2)技術協力・施工(3)設計交渉・施工──の3タイプがある(図2)。これまでに適用した13件の内訳は、技術協力・施工が11件で最も多く、設計交渉・施工が2件だった。設計・施工一括を採用した案件は1つもない。

図2■ 施工者が設計に関与
図2■ 施工者が設計に関与
技術提案・交渉方式のうちの2タイプ。この他に、設計・施工一括タイプがある。工事契約を結ぶ前の施工者は、「優先交渉権者」と呼ばれる(資料:国土交通省)
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 技術協力・施工と設計交渉・施工の2タイプは、いずれも設計と施工を分けて契約する。設計段階のうちに関係機関との協議や追加調査などを済ませてから工事契約を結ぶので、増額のリスクが小さい。