労働時間の削減や新技術の導入など、建設コンサルタント会社が取り組むべき課題は多い。課題の解決と企業の成長を両立するには、不足する人材を補ったり得意技術をうまく引き出だしたりしてくれる“恋人”を探して手を結ぶのが近道だ。
近年の堅調な公共事業に後押しされ、成長を続けてきた建設コンサルタント業界。慢性的な人手不足に加えて労働時間を減らさざるを得なくなり、従来通りの仕事量をこなすのが次第に難しくなってきた。そんな中、他社とタッグを組んで人材を確保したり市場を新規開拓したりする成長戦略を打ち出す動きが活発化している。
同業他社を束ねて人手不足の解消を図るのが、エイト日本技術開発(東京都中野区)を傘下に収めるE・Jホールディングスだ。2019年に建設コンサルタント会社や建築設計事務所など4社を新たにグループに招き入れた(図1)。
E・Jホールディングスの小谷裕司社長は、「現在不足している30代や40代の中堅技術者の確保が欠かせない」と話す(写真1)。
多様な働き方への対応も見据える。グループに加わった4社の拠点は栃木県や福岡県などに点在。例えば19年11月に完全子会社化したダイミックは、E・Jホールディングスが拠点を持たない宇都宮市に本社を構える。「全国に拠点を持てば、地元に帰って働きたいという技術者を手放さずに済む」(小谷社長)
グループ化の検討では、営業地域の補完性や得意技術などを加味する。19年3月に子会社化したアークコンサルタントは、岡山県北中部に拠点を構える。一方、同じ県に本店を持つエイト日本技術開発は県の北部と南部にしか事業所がなく、営業先などはあまり競合しない。拠点が近い分、災害時などはグループ内でサポートし合え、融通が利く。
連携によって技術力の向上も見込める。10年にグループ化した近代設計(東京都千代田区)とは、人材交流などによって、同社が得意とする共同溝の設計ノウハウをグループ内で共有してきた。19年11月には街づくり分野で協力するため、二神建築事務所(兵庫県姫路市)と資本業務提携を結んだ。建築を含むワンストップサービスの提供体制を強化する。
E・Jホールディングスは最近、地方の建設コンサルタント会社から提携などの相談を受けるようになったという。
3次元設計やドローンといった新技術を導入したくても資金が足りない、社員の働き方を改善したくても余力がない──。中小企業にとって新たな取り組みへの負担は大きいものだ。小谷社長は、「提携すれば、機材や教育プログラムを共有するなどグループ全体でフォローできるようになる」と話す。