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東日本大震災で被災した護岸を復旧するため、プレキャストL形擁壁を築造した。自重や土圧を基に安定計算を実施したが、会計検査院は安全でないと指摘。何を間違った?

 東日本大震災による津波で被災した護岸の復旧で、設計ミスが見つかった。会計検査院が2018年度の指摘事例として19年11月に公表した。

 指摘を受けたのは、福島県南相馬市を流れる金沢(かねざわ)川の護岸だ。高さ1.2mのプレキャスト鉄筋コンクリート製のL形擁壁を、右岸6mと左岸96mにわたって、13年度にそれぞれ据え付けた(写真1)。

写真1■ 津波で被災した後、復旧工事を終えた護岸。河口から200mほどの地点にある。強度不足などが判明したが、2020年3月時点で是正工事の方法は決まっていない(写真:南相馬市)
写真1■ 津波で被災した後、復旧工事を終えた護岸。河口から200mほどの地点にある。強度不足などが判明したが、2020年3月時点で是正工事の方法は決まっていない(写真:南相馬市)
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 設計は市から委託を受けた新日本設計(長野市)が担当。日本道路協会の「道路土工 擁壁工指針」に基づいて設計した。

 現地には被災前もプレキャスト製のL形擁壁(以下、旧擁壁)が護岸として設置されていた。1996年から97年にかけて施工したものだ。

 被災後に復旧する護岸の設計は、旧擁壁の安定計算書や応力計算書などを基に検討。被災前の護岸と同じ「原形復旧」に取り組んだ。

 設計者が擁壁の安定計算で想定したのは、擁壁の自重と擁壁背面から受ける土圧だ(図1)。これらの合力がL形擁壁の底版に作用する位置は、底版の中央から前面側に0.123mの地点。底版幅0.85mの6分の1に相当する0.142mの範囲内に収まるので、「転倒に対して安全」などと判断していた。

図1■ 土圧と自重で安定計算
図1■ 土圧と自重で安定計算
会計検査院がミスを指摘した設計。会計検査院の資料を基に日経コンストラクションが作成
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