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1962年度に建設した岸壁を延命化する。鋼矢板の長さが不明だったので、1999年の基準に照らして長さを推定し、電気防食材を取り付けた。ところが、会計検査院が過大な設計だと指摘した。なぜ?

 青森県が実施した岸壁の延命化工事が、会計検査院から過大だと指摘された。対象になったのは八戸港の河原木2号岸壁だ(写真12)。

写真1■ 河原木2号岸壁の着工前の様子(写真:青森県)
写真1■ 河原木2号岸壁の着工前の様子(写真:青森県)
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写真2■ 工事完了後。海面上に見える鋼矢板の青い部分は被覆防食材だ(写真:青森県)
写真2■ 工事完了後。海面上に見える鋼矢板の青い部分は被覆防食材だ(写真:青森県)
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 県は2016年度、岸壁の下部にある既設の鋼矢板の腐食を防止しようと、115mの区間にわたって電気防食工事などを実施した。アルミニウム合金製の電気防食材を鋼矢板に取り付け、50年間の延命を目指す(写真3)。

写真3■ 海中に潜り、鋼矢板にアルミニウム合金製の電気防食材を取り付ける様子(写真:青森県)
写真3■ 海中に潜り、鋼矢板にアルミニウム合金製の電気防食材を取り付ける様子(写真:青森県)
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 設計は、沿岸技術研究センターの「港湾鋼構造物防食・補修マニュアル」に基づいて実施した。同マニュアルによると、必要な電気防食材の質量は鋼矢板の防食対象面積によって決まる。面積は鋼矢板の朔(さく)望平均干潮面(LWL)の1m下から海底面までの「海水中部」と、海底面から鋼矢板下端までの「海底土中部」とに分けて算出しなければならない。

 防食設計を進めるには、岸壁に打ち込んだ鋼矢板の長さの情報が必要だ。そこで県の職員はまず、岸壁を建設した1962年度当時の設計図面などを探したが、保存されていなかった。次に、古い港湾台帳を調べると「鋼矢板下端の深度はLWL−9.7m」と書かれているのを見つけた。しかし、「現場の地質などを考えると、鋼矢板の根入れが浅すぎるのではないか」と疑った。

 そこで試みたのが、構造的に必要な鋼矢板の長さを算定するための再現設計だ。運輸省港湾局(当時)の監修によって99年4月に出た「港湾の施設の技術上の基準」をよりどころに計算し、鋼矢板の長さは22.5m、鋼矢板下端の深度はLWL−20.5mとはじいた(図1)。

図1■ 1999年の基準で再現設計
図1■ 1999年の基準で再現設計
会計検査院の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 県はこの結果を基に、海水中部の鋼矢板の長さを5.5m、海底土中部の長さを14mと推定。岸壁の延長方向に当たる鋼矢板の辺の長さ計192mを乗じて、海水中部の鋼矢板の防食対象面積は1056m2、海底土中部は2688m2と、それぞれ見積もった。

 この面積を電気防食するのに必要な防食材の質量は計1万6105kgに達する。そこで県は、「3.0A」と呼ばれる1個252.7kgの防食材64個を鋼矢板に取り付けた。直接工事費は1985万円だった。