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競技場や車両基地を高床式に

 住宅が密集する鶴見川の流域では、ダムの建設が難しく河道の拡幅にも限界がある。そのため、遊水施設の整備に注力してきた。市街地では下水道の整備や、住宅への雨水升の設置などを推進。国や県、自治体、市民、企業、有識者といった多数の関係者が連携した取り組みだ。

 治水対策は一般的に、河川管理者が単独で河川整備計画を策定して実施する。鶴見川では、担当区間を分けて管理している国土交通省と東京都、神奈川県、横浜市の4者が集まり、河川全体で計画を策定した。

 鶴見川では、都市部の浸水対策やまちづくりを目的とした独自の流域水害対策計画を取り決めた点も特徴だ(図2)。河川管理者の4者だけでなく、流域の他の自治体や下水道管理者など関係者全てを巻き込んだ。川が通っていない東京都稲城市も含む。意見交換や計画の見直しの場を定期的に設け、流域で遊水機能や雨水の貯留機能を高めてきた(図3)。

図2■ 鶴見川では2つの計画を使い分けている
河川整備計画 流域水害対策計画
テーマ 川づくり(河川法に基づく) 浸水被害を防止・軽減するまちづくり
(特定都市河川浸水被害対策法に基づく)
策定主体 河川管理者
(国土交通省、東京都、神奈川県、横浜市)
流域自治体、下水道管理者、河川管理者
(左記+川崎市、町田市、稲城市)
範囲 河川(環境、利水、治水) 流域(治水)
計画内容
  • 水環境や自然環境の利用と維持管理
  • 洪水対策(河道や調節池の整備)
  • 河川整備、下水道整備、流域対策の目標と役割分担
  • 主な対策(雨水貯留浸透施設、下水道ポンプ場、緑地の保全)
目標年次 20~30年 20~30年
鶴見川で策定した河川整備計画と流域水害対策計画の比較。通常の河川整備計画に加えて、流域の浸水被害を抑えるための計画を作った。河川管理者が単独で決めずに、複数の自治体と共同で進めているのが特徴。国土交通省京浜河川事務所の資料を基に日経コンストラクションが作成
図3■ 流域治水で住宅の浸水被害はゼロ
図3■ 流域治水で住宅の浸水被害はゼロ
鶴見川流域での浸水被害の推移。国土交通省京浜河川事務所の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 開発が進んだ市街地を流れる河川だけに、遊水施設の建設場所を確保するのは難しい。土地を有効に使うための様々な工夫を施した。

 多目的遊水地の敷地内には、横浜国際総合競技場(日産スタジアム)や横浜市総合保険医療センターなどの施設がある。遊水地に貯水しても各施設の機能に支障が出ないよう、「高床式」を採用した。

 例えば日産スタジアムは、1000本以上の柱で支えた人工地盤の上に造った。下に洪水を流し込む構造なので、浸水するのは1階の駐車場部分だ。3階のフィールドや4階の客席は被害を受けない。

 川沿いにある横浜市営地下鉄の車両基地も同様に、人工地盤の下を遊水地とした(図4)。遊水地の土地を確保しながら、車両の水没も防げる。

図4■ 車両基地の地下を遊水地として利用
図4■ 車両基地の地下を遊水地として利用
川和遊水地の概要。横浜市営地下鉄グリーンライン川和車両基地の地下を活用している。神奈川県の資料を基に日経コンストラクションが作成
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■変更履歴
2ページ目の第3段落で、初出時に「流域災害対策計画」と記載していた名称を、「流域水害対策計画」に訂正しました。[2020/06/03 20:40]