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大深度への変更で生じた急勾配

 深さの変更で、新たな問題が生じた。その1つは勾配だ。隣接する供用済みの区間は深さ40m程度。そこから大深度地下へ接続するには、37分の1もの急勾配を設けなくてはならない。水の勢いで施設を破損する可能性が出てきた。

 一般的な減勢工では通用しない恐れがある。そこで大阪府は、様々な種類の減勢工の模型を作製し、幅や長さなどを変えて実験を繰り返した。大きく分けると、底面を階段状にする方法と、底面に横棒のような「桟粗度」を設ける方法の2種類だ。

 実験の結果、階段状では十分に流速を落とせなかったが、桟粗度ならば可能だと確認できた。具体的な形状は、コストや維持管理を考慮して、建設時に改めて検討する。

 トンネルの掘削に先立ち、発進基地となる城北(しろきた)たて坑の建設が2019年11月に始まった(写真1)。外径34.8m、深さ102mと、地下河川のたて坑としては国内最大規模だ。戸田建設・ハンシン建設・大容建設JVが、自動化オープンケーソン工法で建設する(図3)。躯体内部は地下水で満たされるので、水中での掘削となる。

写真1■ 2020年4月に撮影した城北たて坑の施工現場。地表付近の地盤が軟弱なので、砂置換で安定させている。城北たて坑の工事費は約100億円(写真:日経コンストラクション)
写真1■ 2020年4月に撮影した城北たて坑の施工現場。地表付近の地盤が軟弱なので、砂置換で安定させている。城北たて坑の工事費は約100億円(写真:日経コンストラクション)
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図3■ 水中掘削機で外周を掘る
図3■ 水中掘削機で外周を掘る
自動化オープンケーソン工法の概要
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施工現場の例
施工現場の例
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PCウェル工法研究会の資料を基に日経コンストラクションが作成

 「大深度のため、地盤が非常に硬い。それをいかに掘削するかが大きな課題だ」。大阪府寝屋川水系改修工営所建設課の片田祥司課長補佐は、こう指摘する。地盤の硬い層ではN値が100~200にも達する。リング状の躯体を地中に押し込む際、下端の刃先部の抵抗が問題になる。

 そこで、刃先部の地盤を確実に掘るため、専用の水中掘削機を2台投入する。躯体の内側に設けた走行レール上を水中掘削機が移動し、油圧ショベルで刃先部の地盤を掘る。

 掘削と躯体の構築が終わったら、底部に厚さ約12mの水中コンクリートを打設する。「水中コンクリートの出来栄えが悪いと、漏水しかねない。1メガパスカルの水圧の中で、いかに緻密なコンクリートを打設するかが最も大事なところだ」。現場代理人を務める戸田建設の堀直氏は、こう気を引き締める。

 たて坑の完成時期は25年度末を見込んでいる。その後、東側にある既設の鶴見たて坑まで、1.7kmにわたってシールドトンネルを掘り進む。

 この区間では、大深度地下への建設を予定している自動車専用道の淀川左岸線延伸部が並走する。事業主体は、国土交通省と阪神高速道路会社だ。現在、大深度地下使用法の申請手続きを進めている。

 大深度の区間は両トンネルともほぼ同じ深さで、最も近い箇所では離隔が2mしかない。互いに影響を与えないように掘削することが、今後の検討課題だ。現時点で、どちらの施工が先になるかは決まっていない。

 城北たて坑から西端の排水機場までの区間の着工は未定だ。まずは、城北と鶴見の両たて坑間を完成させる。地下河川が排水機場につながるまでは、既存の供用区間と同様に、トンネル内に水をためる調節池として活用する。全区間が完成した後は、地下河川内の水を排水機場でくみ上げ、大川(旧淀川)に流し込む。

東京でも大断面のトンネル建設

 大深度ではないものの、東京都でも大断面のシールドトンネルで調節池を建設する事業が進んでいる。環状7号線地下広域調節池だ(図4)。

図4■ 調節池同士を連結して貯留を融通
図4■ 調節池同士を連結して貯留を融通
東京都内にあるトンネル式調節池。この他、港区三田と渋谷区恵比寿を結ぶ「古川地下調節池」がある。東京都の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 トンネルの内径が12.5mで、土かぶり32~40m。延長は5.4kmに及ぶ。施工者の大成建設・鹿島・大林組・京急建設JVが20年2月、シールド機を発進させた(写真2)。

写真2■ 環状7号線地下広域調節池の発進たて坑内の様子。神田川・環状7号線地下調節池を建設する際も、ここが発進たて坑となった。一部を取水施設として使用(写真:東京都)
写真2■ 環状7号線地下広域調節池の発進たて坑内の様子。神田川・環状7号線地下調節池を建設する際も、ここが発進たて坑となった。一部を取水施設として使用(写真:東京都)
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 同調節池は、いずれも整備済みのトンネル式調節池である白子川地下調節池と神田川・環状7号線地下調節池との間を連結する。今回の工事で全体がつながると、貯留量は合計で143万m3となる。

 「3つの調節池が相互に融通できるようになり、局地的な豪雨の際に機能を発揮する」と、東京都第三建設事務所工事第二課の浅見卓也課長は連結の効果を説明する。

 施工上の難関は、環状7号線から目白通りへとルートが半径100mの急カーブで曲がる箇所だ。「大断面でこれだけの曲率だと、相当慎重な施工管理が必要だ」(浅見課長)

 発進たて坑から1.5kmほど離れたルート脇に、19年10月に完成した中間たて坑がある。21年6月までにシールド機が中間たて坑の脇を過ぎる見込みだ。その後は、掘削土搬出などの拠点を中間たて坑に移す。22年度末までに掘削を終え、25年度までに調節池を完成させる予定だ。