全2277文字

テレワークなどの在宅勤務を余儀なくされた結果、ストレスがたまる。心に生じた重大な問題を見逃さないポイントとその解決策を専門家に聞いた。

 政府は2020年5月25日までに、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた「緊急事態宣言」を全国で解除した。だが、従前の経済活動や生活はすぐには戻らない。当面は在宅勤務が奨励され、巣ごもりに偏った生活を続けざるを得ない人は多い。

 慣れない環境がもたらすメンタル面への影響は小さくない。家業の建築設計事務所で働いた後、企業のメンタルヘルス対策や労務マネジメントのコンサルティングを担う仕事に転身した田中豪事務所代表の田中豪氏は、次のように語る。

 「建設業界には、デスクワークで済むものから現場でなければ成り立たないものまで様々な仕事がある。強いストレス下に置かれている点はどちらも同じだ。収束時期が明確でない以上、自身によるストレスマネジメントが必要になる」

 ストレスの一因は、在宅勤務の仕事と日常生活との空間の干渉だ。「在宅勤務を余儀なくされている現在は、生産性向上や健康維持のために自らテレワークを選ぼうとする状況とは、かなり違う」と、オカムラワークデザイン研究所で主幹研究員を務める池田晃一氏は指摘する。

 同社の社内調査の結果を見ると、慣れない在宅勤務による「困り事」は幅広い。空間の使い方で対応できそうなものから一時的なものと割り切ってしのぐしかないものまで、課題は複合的に生じている(図1)。ストレスの原因を見極め、長期的な視野で働き方を改めるフェーズは遠からず訪れるだろう。

図1■ 共働きでは音の問題が大きい
図1■ 共働きでは音の問題が大きい
オカムラが社員に対するウェブアンケートを実施(2020年4月5日~8日)した結果。162人(デザイナー、研究職、事務職など)の回答をまとめた。共働きなど、自分とは別に在宅勤務をしている家族がいる場合の問題を聞いた結果(該当する回答者は35人、複数回答あり)。オカムラの資料を基に日経クロステックが作成
[画像のクリックで拡大表示]

在宅勤務の効用が将来のカギ握る

 共働きなどで仕事空間をシェアする場合、特に音環境の点で家族との“距離感”を保ちたいという声が多い。オンライン会議や電話の様子が生活空間に流れ込む問題は、リノベーション事業を展開するリノベる(東京都渋谷区)が、直近のテレワーク経験者を対象に実施した調査でも「困り事」のトップだった。

 育児や介護、看病などをしながら自宅で働くケースは、これまでにもあった。しかし、健常な家族がいる状況での長期間の労働は、あまり想定されていなかった。「今回は子どもも外出できずに一緒にいる。小さな子どもを複数持つ人や一人親、パートナーが仕事に出なければならない人などは当然、育児・教育と仕事の両立で過大な負担を強いられている」。池田氏はこう説く。

 東日本大震災の際も出社できない状況は続いたが、その後、テレワークは十分に普及しなかった。「困難な状況が過ぎ去った後、窮屈だった記憶しか残らなかったからではないか。今回の事態が収束するまでに、『在宅で仕事がはかどった』『在宅で人生が充実しそうだ』と感じる人が多くなるのか否かで進展の度合いは変わる」(池田氏)