2019年も大規模災害が相次ぎ、多くの自治体が国土強靱化関連の事業計画を見直す。背景には国による支援とのひも付け強化がある。復旧・復興を継続しながら、事前防災に注力する。20年度の当初予算では、風水害の対策が目立った。
8月の九州北部豪雨、9月の房総半島台風、10月の東日本台風──。2019年は記録的な豪雨・暴風が相次ぎ、各地で大きな被害が生じた。災害対策の強化は待ったなしの状況だ。
防災・減災事業の推進をうたった国土強靱化基本法が公布、施行されて6年。この1~2年で、政府は強靱化のさらなる推進を図った。西日本豪雨や北海道胆振(いぶり)東部地震など災害が多発した18年度には、12月に国土強靱化基本計画を改定。20年度までに事業規模で7兆円に達する緊急対策を決定した。
19年6月には、同年度に取り組むべき個別施策をまとめた「国土強靱化年次計画2019」を作成した。基本計画に沿った初の年次計画だ。主要施策の1つには、市街地などの事前浸水対策を掲げた。河道掘削や樹木伐採、堤防の決壊による壊滅的な被害を回避する高規格堤防の整備などを推進する。
日経グローカルがアンケートを実施したところ、多くの自治体が年次計画に基づく対策の効果を実感していると分かった。
19年度に大きな災害のなかった自治体などを除く29府県のうち、48%が役に立ったと回答(図1)。残りは「どちらともいえない」と回答しているが、これは公共土木事業は一般に複数年かかり、単年度での評価が困難なためだと考えられる。役に立っていないと回答した府県はゼロだった。
8割が災害対策の計画見直し
アンケートでは、年次計画を踏まえた災害対策計画の見直し状況についても尋ねている。約8割が「見直した」「今後見直す」「今後見直す予定」のいずれかを選んだ(図2)。都道府県レベルでは地域防災計画や国土強靱化地域計画の改定が進む。
例えば栃木県は、国土強靱化地域計画を20年3月に一部見直した。大規模な災害が比較的少ないと言われてきた同県だが、近年は15年9月の関東・東北豪雨や19年の東日本台風などで被災。災害に強く、しなやかさを備えた街づくりが必須と判断して、計画の改定を決めた。
治水対策では中小河川への水位計や監視カメラの設置に加えて、小規模河川やダム下流部の浸水想定区域図の作成などを追加した。
地域計画の見直しが加速する要因は他にもある。補助金などの扱いが変わる見込みだからだ。国土強靱化の推進に関する関係府省庁連絡会議は19年8月、20年度以降の国土強靱化関連の補助金や交付金で、地域計画に基づいて実施する事業への、重点的な配分や優先的な採択の意向を示した。これまで、補助金や交付金では「一定程度配慮」するという扱いだった。
自治体は、災害対策の個別事業や数値目標といった記載内容を充実させなければならない。