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比較検討や条件変更のたびに再計算と図面修正の作業に追われる設計業務。技術者を苦しめてきたそんな作業を3次元モデルや人工知能(AI)を駆使して自動化する3つの動きを追った。

(イラスト:山田 タクヒロ)
(イラスト:山田 タクヒロ)

“コピペ設計”がついに実現

 施工分野に比べて出遅れ気味だった設計分野でも、自動化が現実味を帯びてきた。比較検討のたびに大量の図面を描き起こし、条件が変われば一から全てやり直すという長年続いた設計手法に、変化の兆しが見えている。

 建設コンサルタント会社の中でも、いち早く設計の自動化に向けて動き出したのがパシフィックコンサルタンツだ。ダッソー・システムズの「CATIA(キャティア)」という設計ソフトを採用。製造業などで用いられてきた「パラメトリック設計」の導入を始めた(図1)。

図1■ 数字の入力だけで橋脚のフーチングを拡大
図1■ 数字の入力だけで橋脚のフーチングを拡大
テンプレートには、鉄筋間隔などの条件をプログラムとして組み込める。パシフィックコンサルタンツの資料に日経コンストラクションが加筆
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 パラメトリック設計では、橋脚などの3次元モデルをあらかじめ「テンプレート」として準備する。プログラミングで、高さや幅といったパラメーターに応じて、構造計算などを成立させながら形状を自由に変えられるようにしておく。CADを操作しなくても、数字を打ち込むだけで3次元モデルを修正できるというわけだ。

 鉄筋コンクリート構造物の場合、かぶり厚や鉄筋間隔を設定して自動で配筋するプログラムをテンプレートに仕込んでおけば、個別の構造検討はほとんど要らない。

 技術者は、地形や線形に合わせてテンプレートを配置するだけでおおよその設計を終えられる。例えば橋脚の予備設計では、T形や円柱形など幾つかのテンプレートから形状を選んで径間数を指定。すると設定した橋の線形に沿って自動で高さなどを調整しながら、何本もの橋脚が“コピペ”されたように一瞬で立ち上がる。

 断面形状を矩形(くけい)から円形に変えるといった比較検討の際は、テンプレートを指定し直せば全ての橋脚をまとめて変更できる。

 テンプレートには、異なる設計間で使えるメリットもある(図2)。土木設計ではこれまで、成果品を使い回すという発想がなかった。「陶芸のように気持ちを込めて1橋ずつ設計するのが当たり前だった」。パシフィックコンサルタンツ事業強化推進部i-Construction推進センターの伊東靖技術統括部長は、こう振り返る。

図2■ テンプレートから部材を選ぶ
図2■ テンプレートから部材を選ぶ
一度登録したテンプレートは何度でも使い回せる(資料:パシフィックコンサルタンツ)
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 鉄道橋で数多く採用されてきた支間長8~10mで3径間の鉄筋コンクリート形式の通称「三八ラーメン」は最たる例だ。構造はほぼ同じにもかかわらず、地形や地質に応じて橋ごとに鉄筋量などを調整しながら設計・作図する作業を、50年近く繰り返してきた。テンプレートを使えば、この反復作業から脱却できる。

 同社は手始めに、橋や砂防ダムの設計でCATIAの試行を始めた。「設計と作図が1つの3次元モデルで完結すれば、図面の不整合の防止にもつながる」。パシフィックコンサルタンツの松井弘常務は、こう期待する。

打ち合わせの場で図面修正

 BIM/CIMの全面導入を進める国土交通省も3次元モデルの使い回しに着目している。幅や高さを数値の入力で操れる3次元の「パラメトリックモデル」を異なるCADソフト間で利用するための基本的な考え方を、2020年3月に示した。

 今後、擁壁やボックスカルバートなど使用頻度が高い構造物を中心にパラメーターの設定ルールをまとめ、民間企業や有志がパラメトリックモデルを投稿できるデータベースを構築する。CATIAのように配筋の情報までモデルに含める予定はないものの、作図の労力を減らせる(図3)。

図3■ パラメトリックモデルのデータベースを作る
図3■ パラメトリックモデルのデータベースを作る
国土交通省国土技術政策総合研究所の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 パラメトリックモデルには合意形成を円滑にする効果を期待できる。「受発注者の打ち合わせや住民説明の際、即座に図面を変えて確認できるのがメリットだ」。国交省国土技術政策総合研究所社会資本情報基盤研究室の青山憲明主任研究官は、こう話す。持ち帰って図面を修正し、再び打ち合わせといったプロセスを省き、働き方改革にも寄与する。