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国土交通省はBIM/CIM原則化の2年前倒しを決めた。「インフラのデジタル化」の成否を分けるBIM/CIMの普及は、発注者と地場の建設コンサルタント会社にかかっている。

(イラスト:山田 タクヒロ)
(イラスト:山田 タクヒロ)

 建設業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)で、BIM/CIM(ビルディング/コンストラクション・インフォメーション・モデリング)が果たす役割は大きい。3次元設計モデルに様々な情報を加え、建設プロセス全体を一気通貫で管理するBIM/CIMは、計画から維持管理に至るまでをまとめて効率化できるからだ。

 国土交通省は2020年4月、直轄事業におけるBIM/CIMの原則化の目標を23年度に改めた。新型コロナウイルス感染症の影響で業務のデジタル化を加速させる必要に迫られ、当初計画の2年前倒しを決めた。

 例えば、BIM/CIMによる3次元モデルはイメージを伝えやすく、受発注者間のウェブ会議で意思疎通が容易になる。国交省は20年3月に、BIM/CIM活用工事における監督・検査マニュアルを作成。3次元モデルに現場の映像を重ね合わせて表示するAR(拡張現実)を使い、遠隔で検査する手法などを示した。

 19年度に直轄事業でBIM/CIMを活用したのは約420件となる見込みだ。18年度に比べれば約2倍に増えたものの、まだ全数には程遠い。

 一層の普及に向けて、国交省は発注者の意識向上や環境改善に注力する。20年3月には「発注者におけるBIM/CIM実施要領」を取りまとめた。注目すべきは、発注者の責務や役割を盛り込んだ点だ(図1)。

図1■ 発注者向けの実施要領を作成
図1■ 発注者向けの実施要領を作成
「発注者におけるBIM/CIM実施要領(案)」のうち、担当者の責務・役割の項目を抜粋。BIM/CIMモデルを扱うためのパソコンやネットワーク環境の整備を求めた(資料:国土交通省)
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 「BIM/CIMモデルの確認や修正指示ができるようハードウエアやソフトウエア、通信環境を整備すること」「発注前に、利用の目的を明確にしておくこと」といった旨を記載した。「生産性を高める必要があるのは受注者だけではない。発注者も、どうすれば自分が楽になれるか考えていくべきだ」。国交省技術調査課の栄西巨朗課長補佐は、こう説明する。

 20年度は、BIM/CIMを扱える発注者を育成するため、地方整備局ごとに教育体制を構築する。全国12カ所で実施しているBIM/CIM活用モデル事業で得た知見を基に、カリキュラムを作成。検査や維持管理など業務プロセスに応じた利用方法を周知していく(図2)。

図2■ BIM/CIM教育のカリキュラムを作る
図2■ BIM/CIM教育のカリキュラムを作る
国は発注者や中小の建設コンサルタント会社を対象とした教育体制を整える(資料:国土交通省)
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 「BIM/CIMは働き方を変えるものだと認識してほしい。今までの仕事を3次元に変えるだけでは、業務量が増える一方だ」(栄西課長補佐)