福井駅の北東に位置する福井開発高架橋は、柱と梁だけでなく、両者が接合する仕口も含む全てのブロックにプレキャスト部材を鉄道構造物として初採用。他工事の影響で着工が遅れるなか、現場打ちと比べて工期を9カ月短縮し、1年8カ月で高架橋を完成させる。
新幹線駅舎の工事が最盛期を迎えた福井駅から北東に約1km。北陸新幹線福井開発(かいほつ)高架橋の建設現場に2019年末、柱と梁だけが組まれた鉄筋コンクリート(RC)ラーメン高架橋が姿を現した。床版を構築する前に支保工を解体したため、高架橋の“骨格”があらわになった(写真1)。
高架橋の細部を観察すると、柱1本につき下端と中央、上端付近の計3カ所に部材同士を接合した目地が見える。柱の頭部にも、橋軸方向に延びる縦梁と橋軸直角方向に延びる横梁、高架橋の左右に突き出た電柱の受け梁、さらにこれらが接合する仕口のブロックが組み合わさっているのが分かる。
分割した柱や梁、仕口のブロックは、全て工場で製作したプレキャスト部材だ。配筋が密になり、従来はコンクリートを現場打ちせざるを得なかった仕口までRC構造のままプレキャスト化したのは、この現場が鉄道構造物で初となる(図1)。コンクリートを現場打ちするのは、基礎と地中梁、ハーフプレキャスト部材を使った床版、床版上の線路を支える路盤などに限られる。
この高架橋を施工するのは大林組・名工建設・道端組JVだ。大林組が08年にRC造の高層マンション用に開発した「LRV工法」を、16年に鉄道総合技術研究所と共同で高架橋向けに実用化した。LRVとは「Left」「Right」「Vertical」の頭文字で、3方向からプレキャスト部材を組み立てられることを意味する。