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10月中旬から翌年6月中旬までの非出水期に限って施工する計画を立てていた足羽川橋梁。ところが、大雨と大雪によって工事が遅延。出水期の施工も実現するため、通年施工できる桟橋を設置した。高水敷の一部を切り下げ、水位の上昇を抑える。

 福井駅から南西に700mほど離れた足羽(あすわ)川では、「スーパー桟橋」と呼ぶ大型の仮設桟橋を川の中に設け、橋梁を架設する工事が最盛期を迎えている(写真12)。橋長192mの3径間連続プレストレスト・コンクリート(PC)箱桁橋である足羽川橋梁だ。前田建設工業・アイサワ工業・前田産業JVが施工する。

写真1■ 架設中の足羽川橋梁を上流から見る。青い桁がスーパー桟橋。桟橋による水位上昇を抑えるため、手前の高水敷を切り下げた。2019年12月撮影(写真:大村 拓也)
写真1■ 架設中の足羽川橋梁を上流から見る。青い桁がスーパー桟橋。桟橋による水位上昇を抑えるため、手前の高水敷を切り下げた。2019年12月撮影(写真:大村 拓也)
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写真2■ スーパー桟橋は幅12mを確保した。右端にある既設のトラス橋は在来線が通る(写真:大村 拓也)
写真2■ スーパー桟橋は幅12mを確保した。右端にある既設のトラス橋は在来線が通る(写真:大村 拓也)
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 スーパー桟橋を設置した最大の理由は、川の中での通年施工を可能にするためだ。「発注当初は10月中旬から翌年6月中旬までの非出水期だけで、数年に分けて施工する計画だった。この条件で河川管理者である福井県の承諾を得ていた」。発注者である鉄道建設・運輸施設整備支援機構福井鉄道建設所の山根秀則所長(取材当時)はこう話す。

 前田建設工業JVは2017年10月から18年6月までの第1非出水期で、両岸から川の中を部分的に盛り土。橋脚の場所打ち杭に加え、橋脚の躯体も施工する計画だった。

 ところが、工事は出ばなからつまずいた。秋から冬にかけて例年にない大雨による増水と深さ1.5mほどの大雪に見舞われたのだ。現場の作業が何度も中断した結果、第1非出水期では杭しか施工できなかった。

 橋脚の躯体などを次の第2非出水期に、その先の柱頭部や移動作業車によるPC箱桁の張り出し架設などを第3、第4非出水期に施工すれば、22年度末の新幹線開業に何とか間に合う。しかし、川の中の工事は途中でどんなトラブルが起こるか分からない。「できるだけ当初の計画通り、第3非出水期までに工事を終わらせるように進めたかった」と山根所長は打ち明ける。