新参者が活躍しづらいイメージが根強く残る建設産業。そんな世界にここ数年、スタートアップの参入が進んできた。建設スタートアップの動向を業界地図とともに整理する。
日本国内でも、スタートアップ企業(以下、スタートアップ)の成長は当たり前のものになりつつある。本業の強化に加え、新規事業を立ち上げるなど規模の拡大を実現する企業も珍しくなくなった。
スタートアップ業界の分析を手掛けるINITIAL(イニシャル、東京都港区)によると、スタートアップ1社当たりの資金調達額は年々増えている。2019年には平均で約3.8億円、中央値で約1.1億円と前年よりも大幅に増加した(図1)。しかし、日本総合研究所の山田英司理事は「順調だった市場も、新型コロナの影響は楽観視できない。20年は、企業が投資を抑える恐れがある」と語る。
対して、公共事業が主となる土木では、公共投資が見込める。国土交通省は感染症対策として、インフラ分野のデジタル化に約178億円の補正予算を計上した。新形コロナを契機に、建設領域のデジタル市場が活性化するだろう。
実際に最近でも、建設分野に強いスタートアップが資金調達する事例が相次いでいる。20年6月には、ドローンによる点検業務の自動化を推進するセンシンロボティクス(東京都渋谷区)が、総額約22億円の資金調達を完了した。
図面や写真を管理し、業務の効率化を支援するフォトラクション(東京都中央区)も、16年3月の設立以降で最高となる総額5.7億円の資金調達を、20年5月に終えた(図2)。資金は基幹事業や顧客サポートの体制強化に加え、アプリケーションを通した新しいITサービスに投じる。