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「緩まないねじ」を生み出した発明家が立ち上げたスタートアップは、事業スタイルもユニークだ。社会や企業から受けた技術的な困り事を、常識を超えた発想で解決に導く。名付けて「発明受託」。

 発明家の卓越した開発力・創造力を社会や企業が抱える様々な課題の解決に生かす──。発明家の道脇裕氏が2009年に起業したNejiLaw(ネジロウ、東京都文京区)は、「発明受託」と呼ぶ独自スタイルの事業を展開している。

 道脇氏は、緩まないねじ「L/Rネジ」の発明者として知られる(図1)。道脇氏が社長を務める同社は、L/Rネジを事業化すること、さらには道脇氏の発明力をエンジンとした発明受託をビジネス化することを目的として設立された。

図1■ これまでの発明は3万件超
図1■ これまでの発明は3万件超
1時間に1件以上のペースで、発明し続けるというネジロウの道脇裕社長。これまでに生み出した発明は累計3万件を超えるという(資料:NejiLaw)
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道脇社長の名を知らしめたL/Rネジ。互いに逆向きの回転構造を持つ2つのナットを締めると、両ナットが互いにぶつかり合ったり引き合ったりしてロックされる。振動などによる緩みを許さない(資料:NejiLaw)
道脇社長の名を知らしめたL/Rネジ。互いに逆向きの回転構造を持つ2つのナットを締めると、両ナットが互いにぶつかり合ったり引き合ったりしてロックされる。振動などによる緩みを許さない(資料:NejiLaw)
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 L/Rネジは、右回転と左回転の双方に対応できるねじ山を持つ特殊なボルトに、右ねじナットと左ねじナットを螺合(らごう)して締結する仕組みだ。これら2つのナット同士がぶつかり合ったり引っ張り合ったりしてロックされ、緩みを許さない状態を生み出す。

 事業化によってL/Rネジの知名度が上がり、道脇氏の実績が知られるようになると、企業などが道脇氏の発明力を頼って、各々が抱える課題の解決を依頼するケースが増加。発明受託も軌道に乗った。

 発明受託では様々な依頼が舞い込むが、道脇氏は「世の中に必要だと思えるテーマ」を中心に依頼を引き受け、自分の発明を社会に役立てたいと考えている。

 そもそも、L/Rネジの発明に取り組んだのも、自身が運転する自動車で脱輪事故を経験し、ねじの緩みがもたらすリスクの高さを体感したからだった。あらゆる製品に部品として使われるねじに潜む事故リスク。これを自らの発明で解決できれば、大きな社会貢献を果たせる。

 「必要なテーマ」だと判断すれば、分野を問わず発明に挑む。例えば11年の福島原発事故に対しては、水の壁で放射線を約90%減衰するユニットを発明。今回の新型コロナウイルスによる感染リスク対策には、一般的に大型である紫外線空間殺菌装置の小型化を実現。卓上で使えるようにした。