記録的な長雨となって全国に被害をもたらした「令和2年7月豪雨」。気候変動の影響に伴って、今後も同様の豪雨災害は避けられないどころか、頻度や外力が増すとも予測されている。落橋や堤防決壊、土砂災害などのメカニズムを振り返るとともに、被害をどう最小限に抑えるかを探る。

特集
やまない「7月豪雨」の惨状
目次
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長雨の脅威から逃れられない
短期間のうちに何度も同じ場所が大雨に見舞われる──。「令和2年(2020年)7月豪雨」の特徴を端的に説明すると、こんな表現が適切だろう。近年まれに見る記録的な長雨は、80人超の死者・行方不明者を出すなど、全国各地で大きな被害をもたらした。
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「圧倒的な水」が越流、堤防背面を洗掘
観測史上最大の降雨で大量の河川水が越流し、堤防の背面を洗堀。人吉市の地形には、西日本豪雨で水没した真備町との類似性が指摘されている。
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路面超えの激流にのまれ14橋が流失
球磨川では1980年代以前の鋼桁を中心に多数の被害が発生した。山に挟まれた地形で激しい水流が橋に作用したり増水によって浮き上がったりしたとみられる。
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イエローゾーンの濃淡に切り込め
熊本県南部で起こった土砂災害の多くは表層の風化が原因とみられる。渓流出口から直角方向に数十メートル離れていれば、垂直避難も視野に。
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「避難前提」の高齢者施設の是非
バックウオーター対策の導流堤を整備していたものの、浸水は防げなかった。球磨村が「避難準備・高齢者等避難開始」を発令しても、千寿園は即座に避難行動を取らなかった。
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シナリオ狂った「タイムライン」
人吉市では複合災害に備えたタイムラインを整備するも、水位の急上昇に対応追いつかず。堤防をかさ上げした地区で住民の防災意識に陰り。