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短期間のうちに何度も同じ場所が大雨に見舞われる──。「令和2年(2020年)7月豪雨」の特徴を端的に説明すると、こんな表現が適切だろう。近年まれに見る記録的な長雨は、80人超の死者・行方不明者を出すなど、全国各地で大きな被害をもたらした。
7月3日から降り続く雨はわずか1週間で、多数の地点において1000mm超を記録した(図1)。これは例年の7月降水量平均の1.5~2倍に当たる。7月に全国のアメダス地点で観測した降水量の総和は、10日時点で20万8308mmに上った。18年の西日本豪雨の記録を塗り替え、1982年以降の計測値で最多だ。
日本気象協会によると、7月3~11日に九州地方で13の線状降水帯が発生した。特に被害の激しかった熊本県南部の球磨川流域では、11時間半にわたって線状降水帯が停滞。異例の長さの継続時間を記録した。東海地方から九州地方の広い範囲で15の線状降水帯を確認した西日本豪雨と比較すると、九州地方だけで同等数の線状降水帯が発生したことになる。
短時間に降る大雨の回数も多かった。期間内に1時間降水量が50mm以上の降雨が発生した回数は82回で過去最多を記録。19年10月の東日本台風による69回を超えた。
1時間降水量から72時間降水量までの様々な時間スケールで過去の記録を上回った地点が、平均的に分布した(図2)。長時間の積算降水量の記録更新地点が多かった西日本豪雨や、台風の軌道に伴った12時間や24時間降水量の記録更新地点が多かった東日本台風など、近年の大被害をもたらした豪雨とは異なる特徴だ。