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 観測史上最大の降雨で大量の河川水が越流し、堤防の背面を洗堀
 人吉市の地形には、西日本豪雨で水没した真備町との類似性が指摘されている

 2020年7月3~4日の豪雨の影響で、熊本県内を流れる球磨川では、人吉市や球磨村などで氾濫が相次いだ。国土交通省九州地方整備局によると、決壊が2カ所、堤防を越えて水が流れる越水が3カ所、堤防のない区間から水があふれる溢水(いっすい)が8カ所に上った(図1)。

図1■ 「重要水防箇所」で多数氾濫
図1■ 「重要水防箇所」で多数氾濫
球磨川の国管理区間で決壊や越水、溢水をした13カ所が「重要水防箇所」に位置付けられていた。図の緑色部は洪水が堤防を越える恐れのある「Aランク」、青色部は堤防の高さなどに余裕がない「Bランク」、黄色部は過去に堤防が壊れたなど「要注意」、無色は背後地に市街部などがある「重点」。「重点」箇所では、2016年3月に堤防が新設された。新設堤防は、圧密で盛り土が締め固められるまで一定期間を要する。そのため、完成後3年未満の箇所は「要注意」に位置づけられる。「重点」箇所は、堤防の完成後4年以上がたっていたため、「要注意」の対象から外れていた。国土交通省九州地方整備局の資料を基に日経コンストラクションが作成(写真:国土交通省)
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 九州地整は決壊原因を究明するため、堤防調査委員会を設置。7月13日に現地を調査した。決壊箇所では付近の痕跡から、河川水が堤防の2~3m上を越流したと推察された。現地では、堤防の盛り土材や天端の舗装材が川側に流出。堤内地の草は川側に倒れていた。このため、越流水が川側に戻る際に堤防の背面を洗堀して、決壊に至ったとみられる。

 調査委の現地調査に参加した熊本高等専門学校の上久保祐志准教授は、「圧倒的な水量が破堤の原因ではないか」と分析する。決壊のあった人吉市では、24時間降水量が410mmと観測史上最大を記録。戦後最悪の被害となった「昭和40(1965)年7月洪水」の2.5倍の雨量に当たる。

 堤防の量・質が不十分だった点も指摘されている。氾濫した13カ所は、いずれも水害の恐れのある「重要水防箇所」だった。越水や溢水が発生した11カ所のうち、洪水が堤防を超える恐れのある「Aランク」が1カ所、堤防の高さに余裕がない「Bランク」が6カ所あった。さらに、完成後3年未満の箇所や過去に堤防が壊れたり川が流れたりしていた「要注意」が3カ所、背後地に市街部などがある「重点」が1カ所だった。要注意の3カ所は全て、65年7月洪水で堤防が壊れた箇所だ。

 人吉市で約10mにわたって決壊した左岸の堤防は、「河道断面不足」と判定され、Bランクに位置づけられていた。加えて、約30mの長さが決壊した右岸の堤防は、蛇行して流れていた川を直線化する際に造られた。堤防が旧川跡にあるため、要注意に区分されていた。河川の専門家の間では、「旧川跡はもともと川が流れたがっている場所だ。堤防をいくら補強しても、決壊を完全に防ぐのは難しい」といった声が上がっている。