東日本大震災から10年となる2020年度末までに、復興道路と復興支援道路がほぼ全て開通する。被災地の迅速な復興を目的に、膨大な予算を投じて国が建設。完成後は無料で開放する。大急ぎで建設を進めた結果、「副作用」として事業費の増大が相次いでいる。
国が毎年、道路整備に確保できる予算には限りがある。そこで、事業を早く進めたい場合は高速道路会社が事業費を一部負担する「合併施行」で整備するケースが多い。
逆に、特殊な事情で予算を確保できるのなら、合併施行よりも国の直轄事業とした方が迅速に進められる。その例が、復興・復興支援道路だ。
東日本大震災で甚大な被害を受けた三陸沿岸部を通る自動車道を復興道路(延長359km)、内陸部と沿岸部を結ぶ自動車道を復興支援道路(延長191km)と命名(図1)。おおむね10年で完成させることを目標に、国土交通省が事業を進めてきた。
震災時に160kmが供用済みだったので、残る390kmを新たに建設する。三陸沿岸道路の普代─野田IC間(延長13km)の工事が遅れているものの、それ以外は全て2020年度末までに開通する見込みだ(写真1)。
国交省東北地方整備局によると、三陸沿岸道路を構成する三陸縦貫自動車道などは震災前、合併施行で整備することを検討していた。ただ、多くの交通量は見込めないため、なかなか事業化が進まなかった。
しかし震災後の11年7月、国の復興対策本部が基本方針を決定。「三陸縦貫道などの緊急整備や太平洋沿岸と東北道をつなぐ横断軸の強化」が盛り込まれた。これを受け、国交省が全て直轄事業で建設することになった。
復興・復興支援道路の整備には、毎年1000億円以上の予算を計上している。ピーク時の17年度は2400億円に上った。復興・復興支援道路を除く国交省の直轄道路の新設予算は近年、総額1兆1000億円程度で推移している。これと比較すると、いかに大きな投資であるかが分かる。
これだけの金額を確保できたのは、復興庁の予算として、国交省の道路予算とは別枠になっているからだ。他の道路予算をほとんど削ることなく、新たな予算を計上した。こうした“大盤振る舞い”のおかげで、10年ほどの短期間で390kmもの道路を新設できた。