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橋やトンネルなど道路施設の定期点検が2024年度に3巡目を迎える。国土交通省は点検技術のカタログ改訂でモニタリング技術を追加した。人力に頼らない点検や診断の時代の到来を目指し、官民の取り組みが始まっている。

 国土交通省は2020年6月、点検支援技術性能カタログ(案)(以下、性能カタログ)を改訂。橋梁の異状を対象とする計測・モニタリング技術を初めて盛り込んだ(図1)。これは、将来のインフラの維持管理を大きく変える起点となるかもしれない。これまで近接目視が中心だった点検手法を刷新する意味を持つからだ。

図1■ 点検支援技術性能カタログ(案)にモニタリング技術を加えた
図1■ 点検支援技術性能カタログ(案)にモニタリング技術を加えた
2020年6月の改訂の概要。国土交通省の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 膨大な量の道路施設の定期点検で、近接目視を基本とするのは効率が悪い。国交省は5年周期の定期点検で、現在進む2巡目、24年度から始まる3巡目における業務改善を目指し、近接目視のウエートを下げる方針を掲げる。19年2月に定期点検要領を改定。非破壊検査やICT(情報通信技術)を活用した計測・モニタリング技術などの導入を認めた。

 そして20年6月、国交省は社会資本整備審議会道路技術小委員会で、道路施設の点検や診断で計測・モニタリングのウエートを増し、3巡目の点検開始までに近接目視や打音検査よりも大きくする青写真を提示。冒頭の性能カタログの改訂に結び付けた。

 ただし、この見通しは技術の順調な進歩が前提だ。「現在実用化されている計測・モニタリング技術は、まだ近接目視をしなくて済むほどの技術ではない」。国交省国道・技術課の森下博之技術企画室長は、このように評する。

 「近接目視の場合、点検者は点検結果を基に、あとどれくらい持つかと構造物の残存安全率を頭の中で判断して健全性を評価・診断できる。しかし、計測・モニタリング技術で結果が定量化され、構造物の健全性の評価に直結するような技術はまだ開発されていない」(森下室長)

 今回の改訂で載った25件の計測・モニタリング技術は、特定の部位などを対象に異状を検知するものが中心だ。例えば、三井住友建設の光ファイバーをセンサーとしてコンクリート橋のひずみを測る技術は、支承の機能障害などを検知できる(写真1)。

写真1■ カタログに載った橋梁モニタリング技術の1つ、三井住友建設のFBG光ファイバーモニタリングシステム。写真は自社で施工し、富山市が管理する宮神橋で2018年に検証中の試作品(写真:三井住友建設)
写真1■ カタログに載った橋梁モニタリング技術の1つ、三井住友建設のFBG光ファイバーモニタリングシステム。写真は自社で施工し、富山市が管理する宮神橋で2018年に検証中の試作品(写真:三井住友建設)
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 日本工営のモニタリング技術で掲載された3件も、桁端部の遊間の開きや段差、上部構造のたわみ、コンクリートの塩害と、検知できる部位や事象をそれぞれ絞り込んでいる(写真2)。同社は複数のモニタリング技術を組み合わせて自治体に提案する考えだ。

写真2■ 橋梁モニタリング技術としてカタログに載った、日本工営の桁端部異常検知モニタリングシステム。同社も富山市が管理する橋梁で実証実験をした(写真:富山市)
写真2■ 橋梁モニタリング技術としてカタログに載った、日本工営の桁端部異常検知モニタリングシステム。同社も富山市が管理する橋梁で実証実験をした(写真:富山市)
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 自治体職員にとっては採用する技術の取捨選択が重要な責務になる。