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2012年に開通した東京ゲートブリッジは計48個のセンサーから成るモニタリングシステムを搭載し、新たな維持管理の手法を切り開くきっかけになると期待された。しかし、思うように成果は上がっていない。コストの高さに加え、データの扱いづらさが原因だ。

 「2020年度までに国内の重要・老朽インフラの20%について、センサーなどの活用による点検・補修を行う」。13年に政府が定めた「世界最先端IT国家創造宣言」の一節だ。

 12年に起こった中央自動車道の笹子トンネルの天井板落下事故などをきっかけに、インフラの維持管理の問題が噴出。計測データに基づく異常の早期発見や維持管理の効率化など、センサーを駆使したモニタリング技術への期待が高まっていた。

 目標の期日は迫る。しかし、センサーの活用は思うように進んでいない。法面の崩落検知や損傷した橋梁の経過観察など、導入例は一部にとどまる。

 全国に先駆けて最先端のモニタリングシステムを構築した橋として当時注目を浴びた東京ゲートブリッジ(東京都江東区)では、いまだ大きな成果は出ていない。12年に開通した東京ゲートブリッジはNTTデータが開発したモニタリングシステム「BRIMOS(ブリモス)」を導入し、ひずみ計や変位計、加速度計など計48個のセンサーを設置した(図1)。

図1■ センサーで取得した橋の挙動をリアルタイムで表示
図1■ センサーで取得した橋の挙動をリアルタイムで表示
東京ゲートブリッジに搭載したモニタリングシステム。支承に設置した変位計や加速度計の計測結果は、地震時に橋の健全性を確認する際などにも用いる(資料:国土交通省東京港湾事務所)
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 東京ゲートブリッジの全長は2618mで、そのうち主橋梁となる鋼3径間連続トラスボックス複合構造部分の橋長は760mに及ぶ。定期点検では鋼床版の疲労亀裂の有無などを全て目視で確認する必要がある。

 国土交通省からの移管を受けて東京ゲートブリッジの維持管理を担う東京都が、20年度に定期点検・調査の委託に要した金額は2650万円(税抜き、以下同)に上る。建設を担った国交省は点検の効率化などを目的に、センサーで大型車の交通量を車線ごとに計測して鋼床版の疲労状況を予測するといった使い方を計画(図2)。モニタリングシステムの構築に約1億6000万円を投じた。

図2■ 走行車線は追い越し車線に比べて通行量が多い
図2■ 走行車線は追い越し車線に比べて通行量が多い
モニタリングによって累積損傷度を車線ごとに求めれば、重点的に点検が必要な箇所を把握できる(資料:国土交通省東京港湾事務所)
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センサーの点検にもコスト

 東京都には、センサーによる計測結果がリアルタイムに伝送される。ただし、支承の変位や桁のひずみが表示されても、異常の有無に結びつけるのは難しい。地震の際、支承に設置した変位計や強震計の計測データを確認する程度でしか役立っていない。大半のデータは、報告書にまとめて国交省に提出するだけだ。

 センサー自体の異常の点検が必要な点も課題となっている。耐用年数100年ほどを求められるインフラ構造物に対して、センサーの寿命は一般に数年から十数年程度。センサーの点検や交換は欠かせない。都は20年に東京ゲートブリッジのモニタリングシステムの点検業務を479万円で発注している。センサーを更新する予定もある。

 BRIMOSを開発したNTTデータは、既に同システムの販売やサービス提供を終えた。同社によると、導入や維持のコストが高く、予算規模が大きい長大橋でしか受け入れられなかった。人工知能(AI)の活用など異なる手段で勝負する。

 計測結果が扱いづらいうえに、設置や維持のコストがかさむのでは、センサーの普及は難しい。過去に橋のモニタリングの実証実験に参加した複数の自治体の担当者らは、おしなべて次のように話す。「5年に1度の定期点検で健全性を確認している。少ない予算を割いてまで、わざわざモニタリングする理由はない」

 一筋縄では進まなかったインフラのモニタリング。とはいえ、光明も見えてきた。国交省東京港湾事務所は20年、東京ゲートブリッジで計測したデータの整理や分析の業務を発注した。疲労が生じやすい箇所を探し出すなどして、点検の効率化に本腰を入れる。

 「分析に必要なデータ量が蓄積できてきた。今後、10年に1度更新する維持管理計画に成果を反映したい」。東京港湾事務所企画調整課の工藤博幸課長はこう意気込む。