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モニタリング技術は、開発や実証が進んでも本格的な実装に至ったケースはまれだ。そこで、政府が予算を投じたSIPの成果などを基に、受発注者が共同でガイドラインを整備。使い方やコストを細かく示し、社会実装に向けて動き出した。

 インフラの維持管理の革新を期待する政府はこれまで、モニタリング技術の開発に多額の予算を投じてきた。2014年度に始まった戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)では、点検・モニタリング技術の開発に対し、5年間で数十億円を配分した。しかし、今も開発した技術の適用事例は限られる。

 原因の1つは、モニタリング技術で何ができるのかを自治体職員の大半が分かっていない点にある。そこで、モニタリングシステム技術研究組合(RAIMS(ライムス))はSIPの成果を基に、「モニタリングシステム活用ガイドライン」を19年に取りまとめた。自治体の中堅技術者を主な対象に据え、個別の技術の使い方やコストの目安を示す。

 RAIMSは国土交通省土木研究所と東、中、西の各高速道路会社の発起で14年に設立した。日本工営やNECなど受発注者とセンサーの開発者が組合員に名を連ねる。

 ガイドラインはRC(鉄筋コンクリート)床版や鋼桁など構造物ごとに章立てを構成し、ニーズを基に参照できる(図1)。具体的な技術の詳細だけでなく、データの活用例なども示した。

図1■ ガイドラインではモニタリング技術を役割別に整理した
図1■ ガイドラインではモニタリング技術を役割別に整理した
国土交通省が2020年6月に公表した計測・モニタリング技術のカタログには、RAIMSの構成企業から7技術が採用された(資料:RAIMS)
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 「モニタリングは計測して終わりではない。データの回収や保存、活用も含めたシステムとして運用しなければならない」。SIPでモニタリング技術による維持管理の高度化の研究責任者を担った東日本高速技術本部の本間淳史総合技術センター長は、こう話す。

 例えば、データを保存する期間や方法の設定は重要だ。単純桁の橋の振動を計測すると、時刻歴波形のデータ容量は1回当たり500MBが目安となる。変状を監視するだけならばパソコンなどに一時保存すればよい。一方、維持管理に生かそうと思えば5年以上蓄積して傾向などを分析する必要がある。その場合、専用のサーバーなどを準備する方がコストや手間を抑えられる。

 RAIMSの理事長を務める早稲田大学の依田照彦名誉教授は、次のように期待する。「近い将来、維持管理ではセンサーを使った方がコストも安全性も優位になるはずだ。米国の事例をみれば、今後2~3年で普及が進むのではないか」