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自治体のニーズとかみ合わず、消えていったモニタリング技術は多い。そんな中、島根県益田市は長期にわたって使い続けられる技術の開発につなげた。職員自らセンサーについて学び、課題を出し合う姿勢が実現に導いた。

 モニタリング技術によって道路保全の効率化や内水氾濫の防止を次々と成功させている自治体がある。人口約4万6000人の島根県益田市だ。少子高齢化に加え、日本海と山林に挟まれた市街地には洪水や土砂崩壊といった災害リスクもついて回る。社会保障費を除く年間予算は約160億円で、財政に余裕はない。

 日本の地方都市の課題が凝縮された益田市には、モニタリング技術の展開を狙う民間企業が集まっている。「実証を踏まえて『益田モデル』を確立すれば、同様の課題を抱える自治体に横展開しやすい」。こう話すのは、センサーやIoT機器の導入で旗振り役を務める益田サイバースマートシティ創造協議会(MCSCC)の豊崎禎久代表理事だ。

 まずは、益田市内に張り巡らされた用水路のモニタリングで成果を上げた。用水路は普段、益田川から水を引き込んでいる。豪雨の際は6カ所の水門を開閉して水位を調節する(写真1)。水門開閉のタイミングは天気予報と職員の勘に頼るしかなく、操作を誤ると内水氾濫を起こす。

写真1■ 益田市内の6カ所の水門に設置した水位センサー。データ通信には、消費電力が少ないLPWAと呼ぶ方式を採用した(写真:MCSCC)
写真1■ 益田市内の6カ所の水門に設置した水位センサー。データ通信には、消費電力が少ないLPWAと呼ぶ方式を採用した(写真:MCSCC)
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 MCSCCは民間企業と共同で、益田市の職員のスマートフォンにリアルタイムで水門付近の水位を知らせる簡易なセンサーを開発。職員が水位の経時変化を示すグラフを見て水門を操作するようにした。2017年に導入して以降、氾濫は一度も起こっていない。

 センサーの機能は最小限にとどめた。電源には乾電池を採用し、充電池や太陽光発電機といったメンテナンスが必要なものは使わない。MEMS(メムス)と呼ぶ小型の電子機器で構成し、価格は1台数万円。予算が少ない自治体でも採用しやすい。