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「揺れやすさ」を測る

 橋桁のたわみは、落橋リスクに直結する。値が大きい場合、鉄筋の破断など深刻な損傷によって桁の剛性が低下している恐れがあるからだ。「桁のひび割れ幅を計測しても、安全性にどう影響するのか判断は難しい。実験で桁の破壊度合いを計測する際には、荷重とたわみ量を見るのが当たり前だ」。TTESの菅沼久忠社長はこう指摘する。

 数値で示されるたわみ量ならば、評価に個人差は生じない。過去の計測結果に比べて大きければ、変状があるとみて詳細に調査すればよい。

 一般に、橋の形式や支間長が同程度ならばたわみ量もほぼ同じになるはずだ。計測結果が傾向から外れた際も調査の対象になる(図3)。

図3■ 同形式の橋を比較
図3■ 同形式の橋を比較
同じ形式・支間長の橋で挙動が異なる場合、変状が生じている恐れがある(資料:TTES)
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 5年に1度の定期点検では、基本的にひび割れや腐食などについて外観を目視して健全性を判断する。「車が通ると揺れやすい」といった挙動の変状は報告書の所感に書き込む程度で、健全性の判定には用いない。「目視点検で健全と判断された橋が揺れやすかったので原因を調べたところ、補修が必要と判明した事例がある」と菅沼社長は明かす。

通行止めの判断にも使える

 たわみを常時計測してモニタリングする手法は、データの蓄積や分析に有効な一方、中小規模の橋への適用が難しかった。

 屋外で長時間暴露した状態で計測の正確性を担保するために、定期的にセンサーを点検する必要があるからだ。電源の確保やデータの保存・伝送方法などは個別に検討しなければならない。人手やコストがかかり過ぎるのだ。加えて得られるデータ量が膨大になり、自治体の職員や地場の建設コンサルタントでは手に負えない。

 「自治体の橋の点検は、職員や地場の建設コンサルタントに任せるしかない。誰でも安価に扱えるのがモニタリング技術の条件になる」(菅沼社長)。

 計測されたたわみデータの活用方法は、他にもある。スクリーニングに使って橋の点検・補修の優先順位を決めたり、地震などの災害後に大まかな損傷程度を把握したりといった用途だ。

 橋の通行止めや廃止の判断基準としての利用も挙げられる。1カ月に1回など一定の頻度で計測を続け、たわみ量が事前に定めたしきい値を上回ったら通行止めを講じる。迂回路などを確保したうえでデータを示し、周辺住民に納得してもらう。

 センサーで異常を早期発見して予防保全につなげるという発想とは異なる使い方だ。ただ、予算や人手の不足が深刻な自治体では、管理する全ての橋を将来にわたって維持するのは難しい場合がある。菅沼社長は、「住民の理解を得ながら撤退戦略を考える必要もあるのではないか」とみる。