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富山市は老朽橋のひび割れ幅や桁の沈下量を計測するモニタリングを実践している。計測値がしきい値を超えた橋は補修するとは限らず、撤去も視野に入れる。合併で拡大した市域に分布する橋を全て維持することは、困難になっているためだ。

 富山市道路構造保全対策課の杉谷真司計画係長は2018年5月18日、無人の橋から届いた電子メールを初めて受け取った。それは市内の下新橋で2基ある橋脚の右岸側に生じていたひび割れの拡大幅が、しきい値の5mmを超えたと知らせるメールだった。市は直ちに同橋を通行止めとした(写真12図1)。

写真1■ 富岩運河に架かる下新橋。右岸寄りの橋脚の上端(赤線内)にひび割れが生じた。写真は補修後に撮影(写真:日経コンストラクション)
写真1■ 富岩運河に架かる下新橋。右岸寄りの橋脚の上端(赤線内)にひび割れが生じた。写真は補修後に撮影(写真:日経コンストラクション)
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写真2■ 下新橋の橋脚の上端に設置したひび割れ幅を計測するモニタリング装置。ひび割れ幅の拡大量がしきい値の5mmを超えると、設置者や富山市の担当職員に警報のメールを送る。2018年3月に撮影(写真:富山市)
写真2■ 下新橋の橋脚の上端に設置したひび割れ幅を計測するモニタリング装置。ひび割れ幅の拡大量がしきい値の5mmを超えると、設置者や富山市の担当職員に警報のメールを送る。2018年3月に撮影(写真:富山市)
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図1■ ひび割れはモニタリング開始から2カ月弱で急拡大
図1■ ひび割れはモニタリング開始から2カ月弱で急拡大
当初20mmほどだったひび割れ幅の拡大量を計測した(資料:富山市)
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 同橋は1965年に架設した3径間のコンクリート橋だ。近隣に住宅街や製紙工場などがあり、利用者は多い。2017年度に実施した定期点検で、市は右岸側の橋脚の支承直下に「欠損を伴う過大なひび割れ」を発見。健全性IIIと判定した。

 市としては、「補修までの間、できれば供用し続けたい」(杉谷氏)。ただ、ひび割れが危険な段階に至れば、直ちに通行止めにする必要がある。そこで市は、非破壊検査会社のアイペック(富山市)にモニタリング装置の設置を委託した。市が発注した初めての橋のモニタリング案件だ。

 アイペックが設置したのは、1カ所のひび割れ幅を計測し、しきい値を超えれば市と同社の担当者にメールを送るというシンプルな装置だ。太陽光発電パネルを電源とする。設置費は49万9000円だった。

 モニタリング期間は18年3月からわずか2カ月ほどで終わった。杉谷氏らは老朽橋の劣化の速さとモニタリングの効果を実感した。下新橋は18年度末から19年度にかけて補修し、供用を再開している。