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新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、建設現場でも日常となったマスクの着用。夏の到来とともに、突然、マスクは熱中症をもたら不都合な存在へと変わる。評判が急転した背景には、特に建設業で目立つ熱中症被害の深刻さがある。
2020年夏、建設現場などにおいてマスクが“悪役”に転げ落ちようとしている。新型コロナウイルスへの感染拡大を防ぐための必須ツールとして扱われ、一時は高値で取引されたほどの重要アイテムが、厄介な存在へと反転した。作業時や運動時のマスク着用は、熱中症のリスクを高めると騒がれ始めたからだ。
メディアにはマスクと熱中症を結び付けた見出しが踊る(写真1)。それだけでなく、自治体なども「マスク熱中症」という強い言葉をぶち上げ、夏季のマスク着用が熱中症を招くと警告を発している。
マスクのリスクがこれほど取り上げられる要因は、マスク着用の危うさを国が訴えている点にある。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて求められている「新しい生活様式」を踏まえ、環境省と厚生労働省は共同で、「令和2年度の熱中症予防行動の留意点について」という資料を2020年5月26日付で公表。自治体などからの周知を促した(図1)。
熱中症予防のポイントを記したこの資料には、こう書いてある。「気温・湿度が高い中でマスクを着用すると、熱中症のリスクが高くなるおそれがあります」
国土交通省が5月14日にまとめた「建設業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」も、現場でのマスク着用を推奨する一方、夏季の着用には注意を促す。マスクが熱中症を招くという考えは、ここにも透けて見える。