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近年、建設現場などで普及してきたファン付き作業着。果たしてこのツールは熱中症予防にどの程度の効果を期待できるのか。夏の作業でも冷涼感を得やすいと言われる評判の実像を独自実験で探った。

 暑い日でも快適に作業できる──。そんな評判とともに注目を集めているファン付き作業着。建設現場での利用が広がってきた。作業着の内部にファンを装備し、バッテリーの力で送風し続けて装着者に冷涼感を与える着衣だ(写真1)。

写真1■ 実験で用いたファン付き作業着。この作業着の内側にはTシャツを着ている(写真:日経クロステック)
写真1■ 実験で用いたファン付き作業着。この作業着の内側にはTシャツを着ている(写真:日経クロステック)
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 果たしてこの着衣が熱中症をもたらす体温上昇を抑制するのかも実験してみた。実験概要は、前の記事までに説明した内容とほとんど変わらない。上半身の作業着をファン付き作業着に変えた部分だけが異なる。

 ここでは主に、ファン付き作業着を着た場合と着ていない場合について、マスクやフェースシールドといったツールを装着しなかった場合で比べていく(写真2)。

写真2■ 実験の様子。ファン付き作業着を着たうえで、口の周りに何も装着しない場合、マスクやフェースシールドを装着した場合で、それぞれ運動に伴う体温変化を測定した(写真:日経クロステック)
写真2■ 実験の様子。ファン付き作業着を着たうえで、口の周りに何も装着しない場合、マスクやフェースシールドを装着した場合で、それぞれ運動に伴う体温変化を測定した(写真:日経クロステック)
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 先の実験と同様に、ファン付き作業着をまとった被験者2人に仮設足場の階段昇降を10分間続けてもらったところ、深部体温の上昇度合いは、普段の作業着の場合とほとんど変わらなかった(図1、2)。「ファン付き作業着を着た場合を見ると、深部体温に影響を与えるほどの効果は確認できない」と、早稲田大学体温・体液研究室の永島計教授は説く。

図1■ WBGTは30℃超の高水準
図1■ WBGTは30℃超の高水準
ファン付き作業着と通常の作業着を着た場合で、マスクやフェースシールドを付けていない場合の実験時のWBGTを示す(資料:早稲田大学体温・体液研究室の協力を得て日経クロステックが作成)
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図2■ 深部体温の上昇度合いは近い
図2■ 深部体温の上昇度合いは近い
深部体温の変化量をファン付き作業着と通常の作業着を着た場合の実験で比較した。口の周りには何も装着していない。変化の度合いはほとんど変わらない(資料:早稲田大学体温・体液研究室の協力を得て日経クロステックが作成)
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