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「2020年7月豪雨」では球磨川上流の市房ダムが、洪水の流出ピークをカットした。それでも、支川の川辺川の合流による影響などで人吉では氾濫を防げなかった。川辺川ダムがあれば、氾濫を大幅に軽減できたという指摘が挙がっている。

 2020年7月初旬に熊本県南部を襲った豪雨は、球磨川流域で生じた戦後最大の被害とみられる「昭和40(1965)年7月洪水」の降雨量を上回った。あちこちで観測史上最大の雨量を記録している。

 国土交通省の速報によると、人吉上流部での氾濫がなければ、今回の豪雨でのピーク流量は、人吉地点で毎秒7500m3程度だ。球磨川水系の河川整備基本方針で定めた基本高水のピーク流量である毎秒7000m3を上回る。

 被災直後から土木関係者の間で話題に上がっているのが、「もしも川辺川ダムがあれば氾濫を防げていたのか」だ。同ダムは、住民や県の反対を受け、国が2009年に建設の中止を決定した。「東の八ツ場ダム、西の川辺川ダム」と言われ、民主党政権下におけるダム建設中止の象徴だった。

 球磨川流域の既存ダムの効果などを検証した京都大学防災研究所水資源環境研究センターの角哲也教授は、次のように指摘する。「川辺川ダムを建設していれば、被害を大きく軽減できただろう」

 20年7月豪雨では、球磨川沿いにおける線状降水帯の停滞が大きな被害につながった。24時間降雨量は下流部の芦北町付近で600mm以上を記録。多くの流域で400mmを超える雨が降った(図1)。

図1■ 球磨川全域で大量の降雨
図1■ 球磨川全域で大量の降雨
球磨川流域における24時間降雨量(7月3日午前10時から7月4日午前10時まで)。寒色から暖色になるほど降雨量が多い。京都大学防災研究所の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 球磨川本川だけでなく支川沿いでも大雨が降っている。支川の1つである川辺川の流域では、24時間降雨量が平均して約350mmだった。川辺川などの支川から大量の水が球磨川に合流。結果、大きな氾濫を引き起こした。