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川辺川ダムの建設中止が決まって11年。国や県はダムに頼らない治水を模索してきた。だが、河川整備基本方針はダムを前提とした当時のまま。ダムの代わりを見つけられなかった代償は甚大な被害となって返ってきた。

 水害のたびに国や熊本県、関係市町村が一体となって治水対策に取り組んできた球磨川。2009年の川辺川ダム建設の中止以降は、国が中心となってダムの代替策について議論する場を定期的に設けるとともに、河川の改修を積み重ねている。

 09~15年には国土交通省が「ダムによらない治水を検討する場」を開く。事業実施のコストや実現性、地域社会への影響を踏まえ、実現可能な治水対策を提示(図1)。特に人吉よりも下流域で、かさ上げや河床掘削、築堤などを講じてきた。

図1■ 積み重ねた治水対策
図1■ 積み重ねた治水対策
「ダムによらない治水を検討する場」の開始以降、河川改修を実施した箇所。2019年6月に国土交通省九州地方整備局が開いた第9回「球磨川治水対策協議会」での説明資料を基に日経コンストラクションが作成
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 15年には国交省が新たに「球磨川治水対策協議会」を設置。1965年7月の戦後最大の洪水を防ぐことを治水安全度の目標として定め、さらに踏み込んだ治水対策を展開している。

 例えば、球磨川中流部に位置する球磨村渡地区。球磨川と支流の小川が合流する地点で氾濫が多発するため、早急な整備が求められていた。

 家屋が密集しているので、連続堤や内水氾濫対策が基本となる。国交省は2014年に、小川の流れを導き、球磨川へ効率的に流して水位を下げる導流堤を整備(図2)。15年には、支流側の内水氾濫を軽減する排水ポンプ施設を3か所に設置した。

図2■ 随所で対策を実施
図2■ 随所で対策を実施
球磨村渡地区で実施した内水対策。第9回「球磨川治水対策協議会」の説明資料を基に日経コンストラクションが作成
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 国の整備に頼るだけでなく、自ら水害の対策に取り組む住民も少なくない。浸水被害を避けるため、ピロティ形式を採用している住宅が数多く確認できている。

 それでも、今回の氾濫では河道における流下能力の2倍以上の水が流れ、被害を防げなかった。渡地区の多くの場所で浸水深は5m以上に達したとみられ、排水ポンプ施設は浸水で全て破損した。何軒もの住宅が床上浸水の被害を受けた(写真1)。

写真1■ 球磨村渡地区の球磨川沿い。浸水の被害を受けたピロティ形式の住宅が並ぶ。2020年7月19日に撮影(写真:日経クロステック)
写真1■ 球磨村渡地区の球磨川沿い。浸水の被害を受けたピロティ形式の住宅が並ぶ。2020年7月19日に撮影(写真:日経クロステック)
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