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 次世代の道路交通サービスを創出するために、阪神高速道路会社は2017年、「Zen Traffic Data」(ZTD)プロジェクトに着手した。4人いる担当社員のうち、若手の立場でZTDを引っ張るのが石原雅晃氏だ(写真1)。

写真1■ 阪神高速道路会社の石原雅晃氏。右奥はZTDプロジェクトのイメージ画像(写真:日経コンストラクション)
写真1■ 阪神高速道路会社の石原雅晃氏。右奥はZTDプロジェクトのイメージ画像(写真:日経コンストラクション)
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 このプロジェクトは阪神高速の中でも渋滞が多発し、構造も複雑な2カ所の区間を対象に、画像センシング技術を使って車両の軌跡をデータ化。交通工学の研究者や自動運転技術を開発する自動車メーカーなどに無償提供するものだ(図1)。バーチャルの世界でシミュレーションを繰り返し、渋滞発生の原因を分析したり、対策を検討したりするのに役立て、新しい道路の在り方を追求する。

図1■ 渋滞発生区間の車両をデータベース化
図1■ 渋滞発生区間の車両をデータベース化
ZTDプロジェクトでは阪神高速4号湾岸線と11号池田線の一部区間を走行する車両の映像を収集。個々の車両を特定できないようにデータ化する(資料:阪神高速道路会社)
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 交通工学は石原氏が大学院で専攻していた分野だ。阪神高速に入社して数年しかたっていないため、学生時代の記憶はまだ鮮明に残る。車両軌跡データの内容を初めて知った時、「学生時代に研究対象にしていた交通データは何とチープであったかと衝撃を受けた」という。

 車両軌跡データの提供は、社会で注目度が高い自動運転の実装にも貢献している。自動運転車が車道で受け入れられるよう既存の自動車の運転傾向を把握するのに役立つ他、自動運転システムの安全性の評価にも利用できるからだ。

 ある大手自動車メーカーの担当者は、石原氏を「自動運転の実現と普及によって高速道路をより安全で便利にすることで、世の中を良い方向に変えようという情熱を感じる」と評する。