i-ConstructionやICT(情報通信技術)の取り組みを進める意欲と、それに直接関与した年数は必ずしも比例しない。そのことは、首都高速道路会社土木保全設計課係長の神田信也氏の経歴や仕事ぶりから分かる。
同氏のキャリアの中心は高架橋など鋼構造物の保全担当で、i-Conの業務に専念したのは2016年7月から19年6月まで。それでも、仕事に対する認識や進め方はこの3年間を経験して劇的に変わった(写真1)。
関わっていたのは、維持管理システム「i-DREAMs」(アイドリームス)の開発だ(図1)。所管する構造物の管理台帳や点検結果などを、3次元点群データと共にGIS(地理情報システム)に蓄積できる。
首都高速がこのシステムの構想を対外的に明らかにしたのは16年10月。神田氏が担当部署の点検推進課に異動した同年7月の時点では、「現場の技術者にi-DREAMsは全く知られていなかった」。当時の同氏には、土木にICTを活用できるという発想もなかったという。
異動するや否や求められる能力が一変した。それまで主に担当してきた鋼構造物の維持管理では、劣化を経過観察して、保全工事は供用を妨げないペースで進めていた。陸上のトラック競技で例えると、長距離走のタイプだ。
一方で、i-DREAMsの開発では、ソフトウエア会社を含む開発チームに提供する資料の作成や、開発途中のソフトの試用などを、いずれも厳しいスケジュール下でこなす必要があった。「土木技術者といえども、時には“短距離走”で働かなければならないと思い知った」(神田氏)