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滋賀県は、「第4の時代」の治水計画と称される流域治水にいち早く着手した。各地点を氾濫の頻度と被害の程度で表現する「地先の安全度」を用いて、氾濫原の水害リスクを可視化。そのリスク評価に基づいて、氾濫原の土地利用や建築の規制も含めた減災対策を進めている。(日経コンストラクション)

 水を制するものは、国を制す──。治水は国家運営の根幹といわれ、その方式は時代に合わせて変化を遂げてきた。しかし最近、治水を取り巻く情勢は大きく変化し、水害の発生リスクはこれまでになく高まっている。

 洪水氾濫のリスクを最小化するには、従来の一般的な治水対策、すなわち雨水貯留施設や洪水調節施設の整備、河川改修といった「流域─河道内」での対策だけでは十分でない。水害防備林や霞(かすみ)堤、二線堤、輪中堤などの氾濫流制御施設の保全や整備、土地利用、建築の規制、水防活動など、氾濫域での減災対策の重層的な実施が求められる。

 京都大学防災研究所の堀智晴教授らは、近代治水計画の変遷を4つの時代に区分し、第4の時代に移行する必要性を論じている(図1)。

図1■ 近代の治水計画は第4の時代へ
図1■ 近代の治水計画は第4の時代へ
近代治水計画の変遷。「氾濫原における安全度評価と減災対策を組み込んだ総合的治水対策システムの最適設計─基礎概念と方法論─」(土木学会論文集B、vol.64.No.1、1-12頁)を基に作成
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 第4の時代の治水とは、治水計画の対象を流域(集水域)や河道から氾濫原(氾濫範囲の平野)を含む流域全体へ拡大する考え方を指す。「自然現象」である洪水氾濫を前提として、氾濫原の土地利用や住まい方の工夫といった減災対策を講じ、「暴露の回避」と「脆弱性の低減」により、被害を軽減させるEco-DRR(生態系を活用した防災・減災)的なアプローチだといえる(図2)。

図2■ 「暴露の回避」と「脆弱性の低減」で被害軽減へ
図2■ 「暴露の回避」と「脆弱性の低減」で被害軽減へ
被災要因と減災のアプローチ(資料:環境省自然環境局、アジア防災センター)
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 氾濫原の土地利用や住まい方に守備範囲を広げて治水対策を考える場合、氾濫原のリスクを計量しておく必要がある。氾濫原のリスクとは、河川・水路群に囲まれた地点で「どのような頻度でどのような被害が生じ得るのか」を指す。そうした地点で住宅を購入する場合、周囲の河川や水路の個々の安全度よりも、自宅がどれくらいの頻度でどれくらい浸水するかの方が気になるだろう(図3)。

図3■ 河川や水路に囲まれた地点のリスクを可視化
図3■ 河川や水路に囲まれた地点のリスクを可視化
地先の安全度の概念図。「中小河川群の氾濫域における減災型治水システムの設計」(河川技術論文集、vol.16、477-482頁)を基に作成
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 滋賀県では、河川・水路群に囲まれた各地点のリスクを「地先の安全度」と呼んでいる。地先の安全度は、氾濫水理解析で得た水理諸量(浸水深や流速、流体力)から計算する。例えば、各地点の「氾濫の頻度(発生確率)」と「被害の程度」をリスクマトリクスで表現できる(図4)。

図4■ 氾濫の頻度と被害の程度をマトリクスで表現
図4■ 氾濫の頻度と被害の程度をマトリクスで表現
リスクマトリクスを用いて表現したある地点における「地先の安全度」。滋賀県流域治水基本方針(2012年)を基に作成
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